孤独死した遺体は時間経過とともに腐敗し、その過程で黒くなります。
当コラムでは、遺体が腐敗によりどのように変化するのか、腐敗が進むことで起こる弊害、発見時の対処法や注意点などをわかりやすく解説いたします。
孤独死現場では遺体自体が黒くなったり、遺体があった場所に黒いシミが残ったりすることが多々あります。
これは遺体が腐敗により黒く変色しているため、そして腐敗した遺体から血液や腐敗体液が漏れ出し、寝具や床板に染み込み黒ずんだシミを作るためです。
時間経過とともに遺体に現れる変化すべてのことを『死体現象』といいます。
経過時間 | 遺体の変化 |
死亡時から | 血の気が引く、体温低下 |
20~30分 | 死斑が出始める |
約2時間 | 死後硬直が始まる |
約20時間 | 死後硬直がピークを迎える、死斑が固定される |
約24時間 | 遺体の皮膚表面が乾燥する |
人は死亡すると血液循環が止まるため血の気が引くとともに体温も低下していきます。
時間経過とともに死斑が現れ死後硬直が起こり、皮膚からは水分が蒸発していき遺体の表面が乾燥します。
経過時間 | 遺体の変化 |
約48時間 | 死後硬直が弛緩し始める、腐敗が始まる、腐敗臭が出始める |
約72時間 | 腐敗ガスにより腹部が青藍色に変色、全身が次第に膨張する |
さらなる時間経過 | 肌が赤褐色から黒色へと変色、体組織が朽ちて血液や腐敗体液が漏れ出す |
数カ月~数年 | 徐々に白骨化する |
腐敗は、約48時間後に死後硬直の弛緩とともに始まります。
まず胃や腸などの消化器系から腐敗が始まり、硫化水素やアンモニア、メタンなどのガスや液体が発生。
ガスによる体色の変化や膨張を経て、やがて体組織が朽ちて破れ血液や腐敗体液が漏れ出てきます。
さらに腐敗が進み、体が完全に崩壊した後は長い時間を掛けて白骨化していきます。
遺体の腐敗は、細菌やバクテリアがタンパク質や脂質を分解することで起こります。
バクテリアは温度が高く(30~40度)高湿度の環境で繁殖・活性化します。
日本の夏はバクテリアにとって快適な環境といえるのです。
遺体の発見が遅れ腐敗が始まると強烈な悪臭、いわゆる”死臭”が発生します。
耐え難いほどの臭いに頭痛や吐き気を催す人もいるほどです。
腐敗臭を嗅ぎつけてハエやゴキブリといった害虫が集まってきて繁殖します。
増殖した害虫は近隣住宅にまで入り込んでいくようになります。
故人が何らかの病気を患っていた場合、部屋に感染力の高いウイルスが蔓延している可能性もありますし、細菌も増殖しています。
腐敗した遺体のある部屋に無防備に入室するのは非常に危険です。
悪臭が染み付くだけでなく、遺体から溢れ出た血液や腐敗体液が床板や壁に染み込み、建材を腐らせてしまうことがあります。
原状回復のためには徹底した消毒・消臭、汚損物や床板、壁紙の撤去などの特殊清掃作業が必要になります。
酷い場合では建物自体の立て直しを余儀なくされることもあるのです。
遺体の発見が遅れるのは、故人が社会的に孤立してしまっていることが原因です。
孤独死しやすい人の特徴は「一人暮らし」「人や社会とのかかわりが希薄」「経済的に困窮している」の3つ。
他人とかかわることが無く、連絡を取り合う家族や友人、恋人もいない人が自宅で死亡したとしても周りはすぐには気付きません。
遺体の腐敗が進み発生した悪臭により、やっと周辺住人が異変に気付くのです。
家族と暮らしている、仕事や趣味など何らかのコミュニティに属している、という人なら遺体が腐敗するまで発見されないということはまず起こりません。
ひと昔前までは孤独死は高齢者や体が不自由な人に多いものでしたが、現代では孤独死者の約40%は20~59歳の現役世代が占めています。
東京都保険医療局がまとめた東京都区部における孤独死数の2014年のデータを基に算出した日本全国の孤独死数は推定約3万人。
すでに孤独死問題は世代を問わず他人事ではなくなっているのです。
*参考サイト
東京都監察医務院で取り扱った自宅住居で亡くなった単身世帯の者の統計(平成26年)
つい先日、2023年の国内の出生数(速報値)が過去最低の75万8631人(前年比5.1%減)だったと厚生労働省が発表しました。
この速報値には、日本で生まれた外国籍の人も含まれているため、日本人限定の出生数はさらに少なくなるでしょう。
加えて婚姻件数も48万9281組(前年比5.9%減)で90年ぶりに50万組を下回ったとのことです。
少子化、生涯未婚率の増加、単身世帯の増加により、社会から孤立する人々はこれからも増え続けると予想されています。
単身で暮らす高齢者の増加が見込まれる中で、日本は超高齢化社会から多死社会へと突入します。
孤独死問題は今後さらに深刻さを増すでしょう。
*参考サイト
第7回孤独死現状レポート(日本少額短期保険協会 孤独死対策委員会:2022年)
日本における「孤独死現象」のありよう~福祉問題の実在と言説、そしてコミュニティ~(早稲田大学大学院社会化学研究科:呉獨立:2020年)
人口動態統計速報 令和5年12月分(厚生労働省:2024年2月27日)
プログレスは全国の
エリアで展開中!
現状対応できない地域も一部ございます。
詳しくはお問い合わせください。
発見次第、迅速な対応が求められるのが孤独死現場です。
そのような場面に遭遇しないのが一番ですが、万が一の時のために対処法を確認しておきましょう。
亡くなっているかどうか判断がつかない時は救急車を呼びましょう。
一命を取りとめる可能性もあります。
死亡が明確な時は速やかに警察へ通報しましょう。
警察による現場検証が行われ、事件性の有無や死因の特定がなされます。
*対処する際の注意点* ・あらぬ嫌疑をかけられないためにも、遺体や部屋の中の物を移動させたり無暗に触れたりしてはいけません。 ・悪臭や害虫による被害が近隣に広がる恐れがあるため、窓や扉を開け放ったり換気扇を回したりするのはやめましょう。 |
もしも家族が孤独死してしまったら葬儀の手配や死亡届の提出、遺品整理なども行わなければいけません。
このような時の対処法についてわかりやすく解説しているコラムをご紹介しますので必要な方はご参照ください。
*関連コラム
孤独死の疑いがあるのはどんな状況?発見した時の対処方法とは
遺体やシミが黒くなるほど発見が遅れた孤独死現場の原状回復には一般的な清掃では対処不可能です。
まずウイルスや細菌に感染する危険性があるため防護服なしに入室できません。
徹底した消毒・除菌作業、汚損物の除去、腐敗体液が染み込んだ床板や壁紙の撤去、強烈な悪臭の消臭、害虫駆除などの技術も求められます。
専門的な知識や技術を駆使して適切に行われなければ、後日シミや悪臭が再発することもある難しい作業です。
孤独死が発生した部屋は、そのまま放置すればするほど事態はどんどん悪化していきます。
信頼できる特殊清掃業者に依頼し、早急に対処してもらうことが何より大切です。
*関連コラム
特殊清掃は資格を持った業者に依頼すべき?選び方と注意点まとめ
筆者の友人が住むアパートで、毎日のように挨拶を交わしていた住人の姿が2日程見えなくなったそうです。
友人が「どうしたのかな?」と思っていたところ、自室で亡くなっているのが発見されました。
冬場で気温も低かったため、遺体は腐敗せずきれいなままだったそうです。
他の住人と交流を持っておられたこと、洗濯物がずっと干されたままだったのを他の住人が気付いたことなどから死後3日での発見となったようです。
この話を聞いた時、孤独死はいつどこで起こってもおかしくないことなのだと改めて感じました。
そして、周囲とのかかわりを持つことがどれだけ大切なのかも思い知らされました。
「近隣住人と挨拶を交わす」「誰かと定期的に連絡を取る」など、ささやかなことでも構いません。
できることを続けていけば、それが孤独死を防いだり、早期発見につながったりするのではないでしょうか。
それでももし、腐敗した遺体を発見することになってしまったら、その時はこのコラムを参考にして速やかに通報してくださいね。