事故物件において、お祓い(供養)を行うことは義務ではありません。
しかし、事故物件に対して不吉な印象を抱く人は多いですし、今後のことを考えるならお祓い(供養)はしておいたほうが良いでしょう。
このコラムではお祓い(供養)をした方が良い理由、お祓い(供養)の費用相場、依頼方法やマナーなどについて詳しくご紹介いたします。
心理的瑕疵(その内容・事実に嫌悪感を持ち、売買・賃貸契約を見送ろうと判断するほどの心理的欠陥)のある物件のことで、具体的には自殺や殺人、火災によって人が亡くなった物件を事故物件といいます。
なお、自然死(老衰、病死)や住宅内での事故死(階段からの転落死、入浴中の溺死など)の場合は、事故物件には含まれません。
瑕疵(欠陥や不都合な事柄)がある物件を売却または賃貸する際、売主・貸主は買主・借主にその内容を伝える義務が生じます。
瑕疵には「心理的瑕疵」「環境的瑕疵」「物理的瑕疵」「法律的瑕疵」の4つがありますが、事故物件は心理的瑕疵にあたるので告知義務の対象となります。
自然死(老衰、病死)や住宅内での事故死(階段からの転落死、入浴中の溺死など)の場合は、事故物件にならないため通常なら告知義務はありませんが、発見が遅れ腐敗が進んだことで特殊清掃が必要になったケースでは事故物件と判断され告知義務が生じます。
・売却の場合 時効はありません。
・賃貸の場合 概ね3年で時効となります。
ただし「入居希望者から心理的瑕疵の有無について問われた場合」「事件性、周知性、社会に与えた影響が大きい場合」「入居希望者の判断に大きな影響があると考えられる場合」は、何年経っていても告知が必要です。
*関連サイト
宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン(国土交通省:2021年)
供養という言葉は仏教からきています。
死者を弔うための儀式で「死後の世界で幸せになれるように」と、供物と祈りを捧げ、魂の成仏をお手伝いします。
神道において住居や場所に対して行われる儀式で、穢れや災厄、罪などの不浄なものを取り払うために行われます。
一般的に、供養は故人の愛用品や思い出の品などを処分する際に行われることが多く、お祓いは孤独死や自殺、殺人、火災による事故死などのつらい死を迎えられた方の部屋自体に行われることが多いようです。
しかし、供養でも「現場供養」といって場所ごと供養することもできますし、どちらが良いということはありません。
故人の宗教にあわせたり、遺族や依頼する方の意向でどちらにするか決めたりしても大丈夫です。
神道では「死」は「穢れ」とされ、祓い清められます。
儀式によって故人を先祖のもとへ送り、50日を経て家庭の守護神になられ、神棚に迎え入れられます。
仏教では、肉体を離れた魂は49日かけて仏となるために極楽浄土へ還っていくとされます。
しかし自分が死んでしまったことに気付いていなかったり、この世に未練があったりすると魂はあの世に還れず、この世を彷徨うことになるそうです。
そうならないためにも、故人の安らかな旅立ちを願うとともに、遺族の気持ちの整理のために供養をします。
故人がつらい亡くなり方をされた場合、近隣住民や物件の管理者、大家さんといった周囲の人たちの中には不安を抱える人も出てきます。
お祓い(供養)をすることで安心感を与えられるので、トラブルにも発展しにくくなります。
事故物件になってしまうと通常時に比べて、新たな購入・入居希望者はかなり見つかりにくくなります。
まれに「事故物件でも気にしない」という人もおられますが、それでも「お祓い(供養)はしてほしい」という意見が多いようです。
あるアンケートによると、全体の28.6%の人が「事故物件に住んでもいい」と答えましたが、その人たちに死因の許容範囲を問うと「孤独死」「事故死」までがほとんどで、「自殺」「他殺」「焼死」は受け入れられないとの回答でした。
「死因も含め事故物件でも気にならない」という人は全体のわずか3%です。
*関連サイト
「事故物件に住むのはあり?なし?」983人へアンケート調査を株式会社AlbaLinkが実施(株式会社AlbaLink:2021年)
プログレスは全国の
エリアで展開中!
現状対応できない地域も一部ございます。
詳しくはお問い合わせください。
お祓い(供養)は、神社またはお寺へ依頼する他、特殊清掃業者や遺品整理業者にも頼むことができます。
神社に依頼する場合は、氏神神社(その地域を守る神社)へ相談するか、インターネットなどでお祓いを行っている神社を探すと良いでしょう。
費用は「初穂料」としてお納めします。
お寺に依頼する場合は菩提寺(信仰する宗派で先祖代々のお墓があるお寺)へ相談するか、インターネットなどでご祈祷してくださるお寺を探すと良いでしょう。
費用は「お布施」または「ご祈祷料」としてお納めします。
サービスの一環としてお祓い(供養)を行ってくれます。
依頼者の要望にあわせて神職者や僧侶への依頼を手配してくれます。
特殊清掃や遺品整理もあわせて頼みたい時には、この方法が手間もかからず便利です。
事故物件のお祓い(供養)の費用相場は3~10万円程で、死因やお祓いを行う範囲(間取り)によって変動します。
一般的に心理的瑕疵が大きければ大きいほど、またお祓い(供養)の範囲が広ければ広いほど高額になります。
・死因別費用相場
死因 | 費用相場 |
自然死 | 3万円前後 |
自殺 | 5万円前後 |
殺人 | 7万円前後 |
無理心中 | 10万円前後 |
・範囲(間取り)別費用相場
範囲 | 費用相場 |
1部屋のみ | 2万円~ |
2部屋以上、一戸建て | 5万円~ |
ビルなどの建物全体、土地全体 | 10万円~ |
お祓い(供養)は死者の魂を弔い、その場所を清める神聖な儀式です。
失礼がないようにマナーを学ぶとともに、お祓い(供養)後の注意点も知っておきましょう。
喪服が最も好ましい服装ではありますが、難しい場合は平服でも落ち着いた服装を選べば問題ありません。
男性であれば落ち着いた色のスーツまたはジャケットにネクタイ、革靴を。
女性も同様に落ち着いた色のスーツやワンピース、ヒールの高すぎないパンプスが望ましいです。
子供の場合は学校の制服、または落ち着いた色の服装が良いでしょう。
お祓い時には新札を用意するのが一般的ですが、難しい場合は旧札でもきれいなものを用意しましょう。
封筒か、白い無地または結び切りののし袋に、お札の向きを揃えて包み、お渡しします。
お祓いの儀式では、供物としてお米、清酒、粗塩、水、五穀、野菜、果物を用意します。
仏式の場合はお線香、お花、お鈴などの仏具が必要になります。
しかし、神職者や僧侶、または特殊清掃業者や遺品整理業者が準備してくれることも多いので、こちらで用意すべきものがあるかを事前に確認しましょう。
当日は、祭壇やお供え物の準備もあります。
時間通りに儀式を始められるように、余裕を持って早めに到着し準備を行いましょう。
買主や借主からお祓いを行ったかを確認された際、証明できなければ信じてもらえないこともあります。
お祓い(供養)を行ったことを証明できれば、相手側の不安を取り除けて、契約につながる可能性もあります。
神社やお寺で「お祓い(供養)証明書」を発行してくれるところもありますし、許可が下りればお祓い(供養)時に写真や動画を残すこともできるので確認してみましょう。
お祓いを行うことで、事故物件に対する不吉な印象を和らげることができますが、それでも一般の物件と比べると選ばれにくさは否めません。
あるアンケートによると、事故物件でも住んでもいいと思える条件として1位が「家賃が安い」、続いて「リフォーム済み」「特殊清掃済み」「お祓いされている」と続きます。
より賃貸や売却をしやすくするためには、リフォームや建て直しを行うなど、心象を和らげたり付加価値を付ける工夫が必要になると心得ましょう。
*関連サイト
「事故物件に住みたくない理由ランキング」男女500人アンケート調査(株式会社AlbaLink:2023年)
超高齢化や単身世帯の増加に伴い、孤独死や事故死が起こった物件に関しては「仕方のないこと」という認識を示す人が増えてきているようですが、それでも「お祓いやリフォームはしてほしい」という意見が大半を占めています。
自殺や他殺、焼死などが発生した事故物件では、お祓いはもちろん建物自体の建て直しも検討するのが賢明なようです。
お祓いは義務ではありませんが、遺族の気持ちの整理はもちろん、周囲の人に安心感をもたらし、賃貸や売却時の助けにもなることを考えれば、お祓いはしておくのが最善だと筆者は思います。
*関連コラム
『孤独死が起きた家が事故物件になる基準とは?売却は可能? 』
『特殊清掃の料金は?料金相場と納得できる業者の選び方を紹介』