小さな不安が積み重なって生きる気力を失い、セルフネグレクト状態に陥ってしまう人がいます。さらに悩みが深刻化し、精神的に追い詰められた結果、自殺という選択をしてしまう場合があります。
自殺によって汚れた部屋を掃除してほしいと、当社にも特殊清掃のご依頼が寄せられます。
自殺は家族や友人を悲しませるだけでなく、汚れた部屋を清掃する負担も掛けてしまうのです。
今回は自殺が起こってしまう原因やセルフネグレクトに陥る原因、自殺が起こってしまった部屋の清掃方法について解説いたします。
厚生労働省が調査を行った「令和5年版自殺対策白書」では、令和4年の日本の自殺者数は2万1,881人と発表されました。
国内の自殺者数は令和2年、令和3年よりも増加しています。
参考サイト:【「令和5年版自殺対策白書」厚生労働省】
自殺は瞬間的な行為ではなく、命を絶たざるを得ない状況に追い込まれると起こると言われています。自殺の原因ですが、うつ病やセルフネグレクトに限らず、過労や貧困、育児や介護疲れ、孤独感など様々な社会的要因が関係しています。
将来に対する不安や社会とのつながりの減少などが作用し、自殺以外の選択肢が思いつかない状況に陥ると、正常な判断ができないまま自ら命を絶つ選択をしてしまうのです。
セルフネグレクトとは、身だしなみなどの自己管理に無頓着になる状態を指します。
例えば何日もお風呂に入らない、食事を採らない、ゴミを捨てずに放置している状態などです。生きるための意欲を失った人は自殺を選択し、孤独死してしまいます。
上記のような様子から、セルフネグレクトは「緩やかな自殺」とも言われています。
セルフネグレクトはうつ病や認知症などの精神疾患が原因となり発症する場合がほとんどです。また、貧困など経済的な問題が影響する場合もあれば、体が不自由になりセルフネグレクトに陥ってしまう方もいらっしゃいます。
「他人に迷惑を掛けたくないからほっといてほしい」と自らの意思でセルフネグレクト状態になっている方も存在します。周囲の人とも関わろうとしなくなり、段々社会から孤立して誰にも助けを求められない環境へ陥るという悪循環が発生します。
自殺による孤独死は部屋から漏れ出た悪臭や、ハエやゴキブリなどの害虫が大量発生している様子から発見されます。
家族と連絡がつかず、実際に訪問してみると亡くなっていた場合もあるようです。
自殺による孤独死を発見したときは、まずは警察に通報します。
遺体や遺品は移動させず、そのままの状態で連絡します。
孤独死現場に警察が到着すると、事件性がないか現場検証と身元確認が行われます。
また、警察とあわせて管理会社にも孤独死現場について連絡しましょう。
身元確認はご遺体が搬出され、遺体の引き取り先が見つかった場合は警察の指定場所で引き渡しが行われます。
警察はご遺体の搬出は行いますが、腐敗化により漏れ出た血液や体液、肉片、髪の毛などは引き取りません。そのため、特殊清掃によって現場に残された痕跡や体液、血液などを洗浄し、再び安全に住める環境になるまで原状回復作業を行います。
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自殺が起こった室内には体液や血液が残され、腐敗臭が発生している場合がほとんどです。
さらに腐敗した血液や体液、排泄物から害虫や細菌が繁殖している場合があります。
感染予防対策をせずに片付けようとすると、病気に罹る可能性があります。
そのため、自殺が起こった現場は特殊清掃によって清掃を行います。
床や壁に染みついてしまった痕跡は強力な薬剤を使用して洗浄します。奥まで血液や体液が染みついており、表面の痕跡を落しても腐敗臭が消えない場合は壁紙や床板を剥がして交換します。また、解体工事を行い建材ごと交換する場合もあります。
体液や腐敗臭が染みついてしまった家財は臭いが漏れないように密封してから搬出します。
首吊りなど、血を流さない方法で自殺をしても遺体の腐敗化によって室内は汚れてしまいます。そのため、部屋を汚さずきれいに自殺できる方法は存在しないと言われています。
自殺以外の選択肢が思いつかず、正常な判断ができなくなる状況に陥っても、自殺によって遺族や管理人に迷惑を掛けてしまうことを思い出してほしいと筆者は願っています。
相手の元気がない、食欲がないなどの普段と違う雰囲気に気付き、勇気を持って声を掛けるだけでも自殺による孤独死を防止できます。
自治体では住民の命や暮らしを支えるボランティア活動が行われています。
また、悩みを抱えているときに24時間いつでも相談できる電話窓口が設置されていたり、暮らしの中で悩んでいることについて相談できる施設が解放されている場合があります。
自治体によっては、「ゲートキーパー」と呼ばれる自殺の危険を示すサインに気付き、声掛けやサポートを行う人たちの養成、指導が行われています。
ゲートキーパーになるために特別な資格は必要ありません。そのため、地域のボランティアや家族、かかりつけの医師など様々な立場の人がゲートキーパーの役割を担えば、悩みを抱えている人が話しやすい相手やタイミングを選んで気軽に相談できる環境が生まれます。
参考サイト:【「あなたもゲートキーパーに!大切な人の悩みに気づく、支える」政府広報オンライン】
厚生労働省では解決の糸口が見えない不安や、生きづらさを感じたときに24時間相談できる相談窓口が解説されています。
すぐには解決できないような悩みでも、誰かに話せば気持ちが楽になるかもしれません。
一人で抱え込んでいる悩みや不安があれば、ぜひ相談をおすすめします。
電話では相談しづらい場合は、LINEなどのSNSでの相談窓口も用意されています。
家族同士での声掛けも防止策の一つです。一人暮らしをしている人の元へ尋ねたり、連絡をとれば自殺や孤独死を防止できます。
悩んでいる人に話すときは、相手の話を否定したり、意見を押し付けてはいけません。
筆者は話し上手の友人に相談の聞き方についてコツを尋ねた経験があるのですが、まずは相手と自分自身の価値観や意見は違って当然だと考えるべきだと教えてもらいました。
意見がある場合は相手の話を聞き終わってから伝えるそうです。
確かに、最後に意見を伝えれば「話を全部聞いてから考えてくれたんだ」とより強く信頼してもらえる気がしますよね。
相手を責めず、心が弱い人だと決めつけずにまずは話を聴いてあげましょう。
また、必要によっては心療内科や精神科の受診を勧めてみましょう。
自殺の原因は孤独感だけでなく、過労や将来の不安など、様々な社会的要因が積み重なり、正常な判断が難しくなった精神状態に追い詰められ起こってしまうと言われています。
自殺が発生した部屋は血液や体液によって汚染されている場合がほとんどのため、特殊清掃業者に依頼が必要です。
血が出ない自殺方法を選んだとしても、死亡後に遺体から漏れ出る体液や腐敗臭で部屋が汚れ、管理人や遺族に負担を掛けてしまうのは避けられません。
元気が出ない、食欲が湧かないほどの悩みを抱えた際は地域のゲートキーパーや相談窓口、家族や友人に早めに相談しましょう。
また、近くに大きな悩みを抱えていそうな人を見かけた場合は声を掛け、話を聞いてあげましょう。