最も孤独死しやすいのは「一人暮らしの60代男性」というのはご存知でしょうか。
もちろんこれにはデータに基づいた理由があります。
当コラムでは、孤独死の現状や孤独死しやすい人の特徴をご紹介し、「なぜ一人暮らしの60代男性が孤独死しやすいのか」を詳しく解説するとともに、孤独死しない・させないための対策をお伝えいたします。
孤独死に法的な定義は存在しませんが、一般的に「誰にも看取られることなく自宅で亡くなり、後に発見されること」と認識されています。
警察では「変死」、行政では「孤立死」として扱われています。
・孤独死者の平均寿命は約62歳で平均寿命を大きく下回る
・孤独死者の8割以上が男性
・60代が孤独死者数全体の3割を占める
・孤独死は年々増加している
・全国の孤独死者数は年間約3万人と推定されている
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平成22年度老人保健健康増進等事業 セルフ・ネグレクトと孤立しに関する実態把握と地域支援のあり方に関する調査研究報告書(株式会社ニッセイ基礎研究所(2011年)
65歳以上で一人暮らしをする人が1980年時点では88万人程だったのに対し、2020年時点では671万人以上に増加。
2040年には896万人を超えると予想されています。
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老々介護とは、高齢者の介護を行う人もまた高齢者であるケースのことです。
近年増えている老々介護を行う高齢者同士で暮らす世帯では、一人が突然倒れても、もう一人も体が不自由であったり認知症を患っていたりなどが原因で対処できず、死後数日間気付かれなかったというような、同居世帯であるにもかかわらず起こる孤独死もあり、近年問題視されています。
発見が遅れ遺体の腐敗が進んでしまっていた場合、汚損や悪臭を取り除き原状回復するためには特殊清掃が必要になり、その費用平均は381,111円とのデータがあります。
孤独死は、家族や近隣住人へ大きな精神的ショックを与えるだけでなく、物理的にも金銭的にも損害が大きいといえます。
家族などの同居人がいる場合、急な体調の変化などが起こってもすぐに気付いてもらえる確率が高いため、単身世帯と比べて孤独死は起こりにくくなります。
未婚の場合や、パートナーとの離婚や死別により独身となった人も含めて、一人暮らしの人は同居世帯と比べて孤独死する可能性は高いといえます。
家族や近隣住人、地域社会とのかかわりがあれば、何かあったときにも異変に気付いてもらえる可能性がありますが、そうでなければ誰にも知られないまま孤独死を迎えてしまうこともあり得ます。
経済的に困窮していると、日頃の食費を削ったり、エアコンの使用を控えたりしてしまいます。
栄養不足や偏りを招き健康状態が悪化して病気になりやすくなりますし、夏場のエアコン不使用は熱中症を引き起こす可能性もあります。
体調を崩しても医療機関にかかるためのお金が用意できず、最悪の場合そのまま死に至ることもあるのです。
孤独死しやすい人の特徴は「単身世帯」「人とのかかわりが希薄」「経済的に困窮している」の3つ。
これらを踏まえて、「なぜ一人暮らしの60代男性が孤独死しやすい」のかを解説いたします。
バブル崩壊をきっかけにそれまでの働き方が見直され、「仕事と家庭のどちらも大切にする」という価値観が現代では主流となりました。
子育てしながら働きやすい環境を整えるための法的支援が始まったのも2010年頃からのことです。
それまでは男性が外で仕事をして稼ぎ、女性は家事・育児をして家庭を守ることが当たり前といった風潮がありました。
60代の男性は仕事一筋で家事全般を妻や家族に任せて生きてきた人が多く、身の回りのことを自分でできない傾向があります。
そのため、離婚や死別で一人暮らしになった時に炊事や洗濯、掃除もままならず、栄養状態や生活環境の衛生面が悪化してしまいます。
加えて、退職後には定期的な健康診断を受けることも無くなり健康状態の確認ができないうえに、外出の機会も減り運動不足に。
そう遠くない未来に健康面で不調が出てくるのは容易に想像ができるのではないでしょうか。
60代以上の男性は、会社での接待文化に慣れ、肩書や上下関係の伴わない人間関係を築くことが苦手な人が多いようです。
特に退職前にそれなりの役職についていた人は、周りからお膳立てしてもらって当たり前になっているため、自分から進んで新しいコミュニティに入っていくことに尻込みしがちです。
仕事を通じてつながっていた社会とも退職したことでつながりが無くなり、結果として地域社会とのかかわりが希薄になってしまうのです。
仕事で人から頼られたり活躍してきたという自負がある人ほど、家族や友人、行政などに助けを求めることを「格好悪い」と感じてしまうようです。
プライドが邪魔をして人に頼ることができず、困ったことがあっても一人で抱え込んでしまいます。
つまり一人暮らしの60代男性は、生活力のなさから健康状態も生活環境も悪化し、体調の急変や突然死などのリスクが増すが、何か起きた場合でも誰にも頼れず、異変にも気付かれず、結果として孤独死しやすくなるということなのです。
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炊事や洗濯、掃除など、自分の身の回りのことを少しずつでも自分でできるようになることが大切です。
家族や友人とマメに連絡を取ることはもちろん、近隣住民とのコミュニケーションに努めたり、地域のイベントに参加する、趣味の習い事を始めるなど、他者との交流を持つようにしましょう。
高齢者支援サービスに力を入れている自治体も増えています。
定期的に自宅を訪問してくれたり、緊急通報装置を貸し出してくれるなど、自治体ごとに様々なサービスを行っていますので相談してみましょう。
持病がある、体が不自由、生活力をつける自信がないといった場合はもちろん、家族に迷惑をかけたくないという人なら老人ホームなどの施設への入居がおすすめです。
身内が一人暮らししているなら、定期的な連絡を習慣化するようにしましょう。
毎日「おはよう」の電話をしたりメールを送ったりするだけでも、反応がなかった場合に「何かあったのかも」と気付けるきっかけになります。
自治体の高齢者支援サービスの他にも、最近では民間企業が提供する見守りサービスも増えました。
室内にカメラを設置していつでも家族が様子を見られる、異変があった際に緊急信号を発して通報してくれるなど、多様なサービスがあります。
近所に一人暮らしの高齢者がいる場合には、普段から挨拶や会話をしてコミュニケーションを取るように心掛けましょう。
何かあったときに近所の人たち皆で、互いに助け合える雰囲気作りができると良いですね。
一人暮らしの60代男性に該当する方やそのご家族様は、孤独死しない・させないための対策の重要性をご理解いただけたと思います。
しかし、該当しなかったからといって他人事ではありません。
まもなく多死社会が到来するといわれる日本では、高齢者の一人暮らしも、老々介護をすることになる同居世帯も益々増加します。
また、若年層の孤独死も決して少ないわけではありません。
すべての人が自分事だと認識して、行政とも協力し、孤独死しない・させない社会を作らなくてはいけないと筆者は感じています。
*関連コラム
『親が孤独死をしてしまった場合はどうすれば良い?やるべきことは』