特殊清掃の現場は高齢者の孤独死だけではありません。
特に大都市圏や人口が密集している都市で増加しているのが、若者の孤独死による清掃依頼です。
なぜ若者の孤独死が増えているのか、その背景から紐解いて原因を追究していきます。
孤独死は誰にも看取られずに一人で亡くなってしまうことです。
一般敵に孤独死というと、一人暮らしの高齢者が病気などの発作により自宅でひっそりと亡くなっているイメージを持つ人がほとんどでしょう。
しかし、一般社団法人日本少額短期保険協会 孤独死対策委員会の調査によると、孤独死とは無縁に思える20代の若者が孤独死全体の5.0％を占めている実態がわかります。
参照：「第7回孤独死現状レポート」（一般社団法人日本少額保険協会 孤独死対策委員会 2022年11月）
一般社団法人日本少額短期保険協会 孤独死対策委員会の調査を基に話を続けます。
高齢者の孤独死は発作などの病気が原因になる場合が多いのに対し、20代～40代までは自殺によって亡くなる人の割合が高く、同じ孤独死でも死因が大きく異なります。
進学や就職を機に都会に移り住む若者は、慣れない仕事や土地で友達や知り合いがいない孤独な一人暮らしになりがちです。
学生寮や社員寮で生活しているなら毎日誰かと顔を合わせて会話をするかもしれませんが、単身者用の賃貸マンションなどでは近所付き合いもほとんど皆無といっていいのではないでしょうか。
さらに大学や職場の人間関係が良くなければ、相談する相手もおらずストレスが溜まる一方です。
発散する気力も失せで段々とふさぎ込むようになり、うつ病やセルフネグレクトに陥って自宅に閉じこもってしまう人も少なくないようです。
自分の境遇にどこかコンプレックスを抱えている人もいるようで、親や地元の友人にも相談せず、誰にも知られないまま自ら命を経ってしまうのです。
参照：「第7回孤独死現状レポート」（一般社団法人日本少額保険協会 孤独死対策委員会 2022年11月）
孤独死の件数は男性のほうが女性よりも多いといわれています。
しかし、20代と30代の孤独死の自殺者は女性の割合が高く、特に20代では他の年代に比べて女性の多さが突出しています。
女性は一般的に疎外感や孤立感を自覚していても表に出さず、蓄積し続けたストレスが複雑に絡み合って、突如限界を迎えてしまうといわれています。
参照：「第7回孤独死現状レポート」（一般社団法人日本少額保険協会 孤独死対策委員会 2022年11月）
誰もが孤独死する可能性がありますが、特に孤独死しやすい若者の特徴について紹介します。
実家を出て一人暮らしをしていると互いの状況があまりわからないため、病気やケガなどで体調を崩していても変化に気づかれません。
近くに住んでいればちょっとした用事で行き来することもあるので状況を把握できます。
会話や連絡もしやすいので、心の変化にも気づきやすいでしょう。
孤独死は、普段から家族や友人と連絡を取らない人に起こりやすいといわれています。
一人暮らしをしていても、隣近所の人とあいさつを交わしていれば、何か異常が起きたときに気づいてもらえる可能性が高まります。
しかし、都会では近所付き合いをしている人は稀でしょう。
モノやサービスなど社会の利便性が向上したことで困ったときに近所の人に頼る必要性がなくなり、人間関係や人付き合いの希薄化が進んだと考えられます。
コミュニケーションが苦手な人は印象に残りにくいため、変化が起きてもなかなか気づいてもらえない可能性があります。
アルバイトや学校を休んでも「性格」を理由にされ、心配されないこともあるようです。
お金がなくて食費を抑えたり、体調不良なのに病院に行けなかったり、貧困が原因で最低限の生活ができない人も増えています。
家賃や光熱費、社会保険などの支払いに追われ、このような状態に陥ることも珍しくありません。
近年はスタグフレーション（賃金が上がらないにもかかわらず、物価や金利が上昇する厳しい経済状態）の状態が長く続いており、正社員で安定した職に就いていても生活にゆとりがないと感じる人も少なくないでしょう。
もはや安定した生活を送ること自体が難しくなっている時代といえます。
仕事や人間関係に疲れながら働いても豊かになれず、心が疲弊していく。
ストレスを回収するには趣味に没頭したり、家族や友人に愚痴を聞いてもらったり、悩みを相談したりして気持ちを切り替えることが大切です。
しかし、家族や友人と連絡を取り合っていなかったり、悩みをため込んだりする人は孤立しやすく、病気になった場合に悪化させてしまう可能がもあります。
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孤独死から「ゴミ屋敷」を連想する方もいるでしょう。
高齢者の孤独死現場は、大半がゴミ屋敷と化しています。
その理由は、死別や離婚によって身辺の世話をしてくれる人がいない、高齢男性は家事の経験がない、体の自由が利かず片付けや掃除ができない、孤独なのでたとえゴミでも身近にあれば精神的に落ち着けるなど、実に様々です。
若年層の場合は、ゴミが散乱していても少し片付ければ床が見える程度の部屋が多いといわれています。
しかし、セルフネグレクト状態に陥っている人も多く、生活環境や栄養状況を改善する意欲を失い、生活そのものに活力が湧かなくなり、結果として自殺を選ぶ若者が後を絶ちません。
セルフネグレクトに陥り、食事への興味も薄れてコンビニ弁当しか食べなくなるなど、孤独死をされる方の多くが自炊をしていません。
趣味がない人は外出の機会も自然と減ります。
外に出る機会が少なくなれば発見や気づきがなくなり、生活の楽しみも減少するのではないでしょうか。
また、趣味があっても自宅で完結できたり、買い物はネット通販だけで済ませていたりすれば、ひきこもりがちになります。
ストレスの軽減や食欲のコントロール、脳の活性化のためにも、外出することは人間の生活において非常に大切です。
孤独死を防ぐには、家族や友人が定期的に連絡を取ることです
何も特別なことはありません。
家族や親戚、友人の皆さん、コミュニケーションこそが一番の防止策と心に留めておいてください。
中高年以上の方なら誰もがご存じかもしれませんが、伝説のコント番組『8時だョ！全員集合』でドリフターズの加藤茶さんがテレビの前の子どもたちに向かって「歯をみがけよ！」「宿題やれよ！」「お風呂入れよ！」「風邪ひくなよ！」と規則正しい生活を意識するよう声かけをされていました。
こうした何気ない声かけが大切なのです。
社会に出た大人に向かって同じことをするなんてと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、「ちゃんと食べているか？」「困ったことはないか？」というシンプルな言葉は心で受け止めやすいのです。
「あなたのことを心配している」という大事なメッセージがスッと伝わり、相手の気持ちを和らげます。
電話やLINEなどのツール、もしくは直接会いに行って声をかけてもいいでしょう。
ちょっとした声かけは本当に大切です。
このときに心身ともに変わりがないかチェックしましょう。
一人暮らしを始めるときは、管理人や大家さん、隣人に挨拶をしましょう。
顔や生活リズムを覚えてもらえば、何かあったときに声をかけてもらいやすくなります。
もし大学進学などでお子さんが一人暮らしを始めるときは、親も一緒に挨拶回りしておくと安心です。
XやInstagram、FacebookなどSNSを利用している場合は、投稿を定期的にチェックすれば近況を確認できます。
頻繁に投稿していた人が急に投稿しなくなったり、コメントの様子がおかしかったりすれば、何かあったのかもしれません。
確認を習慣にしておけば、異変に早く気づけます。
若者の孤独死の原因は自殺が多くを占めています。
高齢者と同じように、若者への手厚いサポートも早急に必要です。
若者が抱える静かなSOSを周りにいる人が察知し、支えあえる仕組みづくりが求められます。
孤立しないように地域や職場、同じマンションの住人や管理人さんと顔を合わせれば挨拶をかわすなど、日常的にコミュニケーションを取るように若者自身も意識することが大切です。
若者の孤独死を防ぐ最大の防止策はコミュニケーションを取り、孤立させないことに尽きます。
です。
もし離れて一人暮らしをしているお子さんや親戚の若者がいる方は、なるべく電話やLINEなどで頻繁に連絡を取り合うようにしましょう。
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