孤独死現場を発見した場合、警察への連絡や現場検証が一段落すると、次は室内の徹底的な消臭作業が必要不可欠となります。
ご遺体を部屋から運び出した後も、室内に死臭は残り続けます。
そのため、腐敗臭を完全に取り除くためには、原状回復作業として強力な消臭作業も行わなければいけません。
今回は孤独死現場で悪臭が発生する原因や、孤独死が発生した現場の消臭手法について解説いたします。
人間が死亡して生命活動が停止すると、腐敗が始まります。
腐敗が始まると細菌やバクテリアが増殖し、遺体が分解される過程で死臭が発生します。
悪臭は夏季であれば2~3日、冬季であれば5~7日程度で発生します。
しかし夏場でもエアコンがつけられた部屋で亡くなった場合など、条件によっては死臭が発生する時間に差が生じる場合があります。
また、亡くなられた方の年齢や性別、体格などによっても変わります。
孤独死現場の窓やドアが閉めきられていた場合、死亡して数日後は誰も異臭に気付きません。しかし、死亡から1週間以上が経過すると、室内に充満した死臭がドアや窓の隙間から漏れ始め、異変に気付く人が現れます。
この死臭は嗅いだ人の気分を害してしまうだけでなく、建物の床や壁、干してある洗濯物などに染み付き、簡単に消えなくなります。
不快な臭いを感じたらまず、即座に対処できる手段として、自宅に常備していた消臭剤を使用するのではないでしょうか。
筆者も屋外から不快な臭いが漂ってきたときは、深く考えずに常備していた消臭剤を用いて消臭した経験があります。
死亡後すぐに遺体を運び出した後や、自宅から離れてた場所で孤独死が発生した場合など、特定の条件下であれば市販の消臭剤でも消臭できます。
しかし、孤独死現場に充満した死臭は、臭いの原因から改善しなければ市販の消臭剤を使っても完全に消臭できません。
孤独死に伴う死臭の取り除くためには、ほとんどの場合強力な薬剤や機器の使用が必須になります。
一般的に市販されている消臭剤は、尿臭や便臭用として販売されている物がほとんどです。
死臭を消せるほど強力な洗剤はネットショッピングでも購入できますが、高価なだけでなく、薬剤の刺激が強いため使用時には細心の注意が必要になります。
無理に自力で消臭しようとはせず、専門の特殊清掃業者に消臭作業を依頼するほうが労力や費用を掛けずに死臭を除去できるでしょう。
死臭は市販の芳香剤や消臭剤、空気清浄機などでは簡単に取り除けません。
死臭の原因である体液や血液には油分が含まれており、水分のように蒸発しないため臭いの発生源として現場に残りやすいのです。
さらに、油分を含ん体液や血液は床や壁の奥深くに浸透する傾向があり、フローリングだけでなく、床板やその下の構造部分や断熱材にまで浸透します。
そのため、消臭剤や空気清浄機を使用しても、死臭の根本的な原因である体液や血液を完全に除去しない限り、完全に消臭できません。
また、一般的な清掃では室内に溜まった悪臭を逃がすために窓やドアを空けて換気が行われますが、孤独死現場の清掃では換気を行ってはいけないとされています。
窓やドアを空けて室内の死臭を逃がしてしまうと、死臭が拡散され、近隣にお住まいの方の元へ異臭が届いてしまうためです。
床板の奥や断熱材にしみついた体液や血液の除去が困難であること、窓やドアを空けず閉め切った空間で掃除をしなければならないことから、孤独死現場の清掃は特殊清掃業者への依頼がおすすめです。
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死臭を取り除くために、特殊清掃業者は以下のような方法で消臭作業を行います。
現場にはご遺体から発生した細菌やウイルスが残されています。
感染を防ぐため、作業スタッフは適切な防護服やシューズカバー、手袋、防毒マスクを着用します。
また、室内に強力な消毒剤や消臭剤を広範囲に散布します。
状況に応じてオゾン脱臭器を使用し、さらに徹底的な消臭を行います。
死臭は室内の床や壁だけでなく、家具や衣類、布団などにも染みついています。死臭が染みついた家財を臭いが漏れないように梱包したり、室内に残された汚物や害虫の死骸などを掃き集めて除去します。
家財の中に貴重品や思い出の品が含まれていた場合は、形見としてご遺族に渡します。
死臭が染みついた家財を運び出した後は、市販の洗剤よりもより強力な殺菌効果や洗浄効果を持つ薬剤を使用し、床や壁に残った体液や血液を清掃します。
血液や体液が床下や壁の内部にも染み込んでいる場合は床板や壁紙を剥がし、汚れた部分から完全に取り除きます。
解体が難しい場合は、臭いを封じ込める特殊なシーリング材を塗る場合もあります。
清掃や解体作業が完了したら、オゾンを発生させる装置を使用し、室内の臭いをさらに取り除きます。
オフィスや個人の住宅など、あらゆる場所で警備事業を展開している綜合警備保障株式会社(ALSOK)のコラムでは、オゾンは菌やにおいの物質が近くにあると、融合して酸化させ、臭いの物質を破壊する特性があると説明されています。
そして融合した後は酸素だけが発生しますので、きわめて安全性が高い消臭方法であると注目されています。
*参考サイト
【「オゾンによる除菌・脱臭のメカニズムと効果的な利用方法」綜合警備保障株式会社(ALSOK)】
遺体から染み出た血液や体液、汚物が残されている光景を目にすると、人によっては強い刺激を受ける場合があります。
筆者は弊社で行った孤独死現場の清掃中の写真を資料として拝見していますが、凄惨な状況が写っており、どうしても暗い気持ちになってしまいます。
さらに死臭が充満した孤独死現場で消臭作業を続けていると、体だけでなく精神にも負担が掛かります。
東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部による研究結果では、悪臭は交感神経系のストレス反応を起こし、その反応は匂いの不快感に応じて高まると説明されています。
*参考サイト
【匂いによるストレスは、その匂いを不快と思うか思わないかに影響を受ける ―ヒトにおける悪臭とストレス応答の関係の一端を解明―】東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部
苦痛を抱えてトラウマを作ってしまわないよう、孤独死現場の消臭作業は特殊清掃業者に依頼しましょう。
業者に依頼すれば消臭作業だけでなく、死臭が染みついてしまった家財の処分や、ハウスクリーニングまで原状回復に必要な作業をすべて任せられます。
遺体が発見されるまでの経過日数に応じて、腐敗した遺体から発生する臭いは強まります。
臭いが強くなれば、消臭作業に掛かる手間や時間が増加し、費用も増大します。
さらに特殊清掃は特別な薬剤を使用したり、防護服や清掃道具などを使い捨てる前提で使用するため高額な費用が請求されます。
必要な費用は業者によって異なりますので、まずは複数の業者に見積もりを依頼し、対応スピードも確認しながら利用する業者を選びましょう。
状況を説明すれば即日中に対応してもらえる業者も存在しますので、こちらの都合にあわせて作業スケジュールを調整してもらえる業者を選ぶのもポイントです。
死臭の原因はご遺体や血液、体液の腐敗によって増殖した細菌やバクテリアが発生させたガスによるものです。また、血液や体液は室内の床や壁に浸透しやすく、市販の消臭剤を散布しただけでは消臭できません。
消臭には専門家の技術が必要であり、市販の消臭剤を使っただけでは悪臭被害が再発する恐れがあります。
死臭を確実に取り除くためには、特殊清掃業者に依頼しましょう。