耳にすることも増えた”特殊清掃”という言葉に、「消毒・除菌する」「孤独死の部屋をきれいにする」といった漠然としたイメージをお持ちの人が多いのではないでしょうか。
しかし、実際のところ、特殊清掃って具体的にどんな作業をするのか、どんな現場で活躍しているのかを知っている人は少数です。
知っていれば、いざという時に「これはハウスクリーニングに頼むべき？特殊清掃の方がいいの？」「特殊清掃と遺品整理は一緒に頼めるの？」などと、迷い困惑してしまう心配もありません。
当コラムでは特殊清掃の作業内容や現場例をご紹介しますので、いざという時の備えとしてぜひお役立てください。
2020年頃から日本でも大流行した新型コロナウィルス感染症をきっかけに、”特殊清掃”の認知度は大幅に高まりました。
皆様の中でも、特殊清掃は「消毒・除菌をする」ことであると認識している人も多いのではないでしょうか。
実際には、消毒・除菌は特殊清掃作業の一部分でしかありません。
では、特殊清掃とはどのようなものなのかを詳しく解説いたします。
感染症のクラスターが発生した現場の他にも、発見の遅れた孤独死の現場、ゴミ屋敷、動物の多頭飼育崩壊の現場など、汚染や悪臭が酷く、人が住めないような状態になっている場所を原状回復させる作業のことをいいます。
特殊清掃が必要な現場では、体液や血液が床や家財に染み込み、耐え難い強烈な腐敗臭や害虫の発生なども見られます。
このような状態では、一般的な清掃では対処しきれないばかりか、細菌感染のリスクもあるため入室するのも危険です。
特殊清掃では汚染された家具・家財類の撤去、消毒・除菌、消臭、害虫の駆除、場合によっては屋内の解体やリフォームなども行って、人が健康上問題なく過ごせる環境にします。
これらの作業を的確に行うため、専門的な知識と高い技術力が求められるのです。
特殊清掃は、具体的にどのようなことをするのでしょうか？
実際に行われる作業内容をご紹介します。
現場では雑菌が繁殖していることが多く、感染症の危険性もあるのでまず最初に除菌・消毒が行われます。
オゾン脱臭機や専用薬剤を使用して、腐敗臭などの悪臭を徹底消臭します。
臭いの原因が床材や建物の構造にまで染み込んでいる場合は解体工事が必要になることもあります。
ウジ虫やハエなどの害虫が繁殖しているケースも多々あり、近隣へ被害が拡大しないように駆除を行います。
体液や血液、生ゴミの汁などが染み込み汚染された物品や床材、壁などは撤去して処分します。
室内の清掃・クリーニングを行います。
業者によって対応幅は異なりますが、遺品整理やリフォーム、現地供養など、必要に応じて行われる作業もあります。
事故物件となった不動産の運営や売却をサポートしてくれたり、建て替えや解体工事を請け負ってくれたりする業者もあるので、自分の要望にあわせて業者選びをするのが良いでしょう。
どのような状況・場面で特殊清掃を依頼すればいいのかわからないという人もおられると思います。
特殊清掃が行われる現場を、具体例を挙げて解説します。
孤独死されて発見が遅れてしまった場合、遺体から体液や血液が染み出し、腐敗が進んでいることがあります。
異臭などの異変により発覚するようなケースでは、すでに酷い状態である可能性が高いため無暗に入室してはいけません。
警察に通報するか、不動産の管理会社に連絡して対応してもらいましょう。
感染症が拡がる恐れがある場所では除菌・消毒作業を行う必要があります。
悪臭や害虫が発生しているような酷い有り様のゴミ屋敷・汚部屋の場合、特殊清掃をしなくては原状回復は見込めません。
繁殖を繰り返して飼育頭数が増え、ブリーダーや飼い主が十分な世話や管理ができなくなった状態です。
動物の糞尿や遺体がそのままにされているような悲惨な現場もあります。
煤や有害物質の除去作業、焼け焦げた臭いの消臭には専門的な技術を要します。
近年増加している大雨や大型台風により浸水被害も相次いでいます。
汚水には様々なウイルスや雑菌が混ざっており、傷口から感染し破傷風になる危険性もあるため消毒作業は必須です。
また浸水箇所の建材が腐ってしまうこともありますので、汚泥を取り除き十分に乾燥させなければいけません。
厚生労働省のホームページでも注意喚起されていますので、ご参照ください。
＊参考サイト
被災した家屋での感染症対策（厚生労働省）
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詳しくはお問い合わせください。
特殊清掃では、体力・技術力・判断力・対応力が求められますが、最も重要なのは強い精神力だと筆者は思います。
もちろん体力や技術力が伴っているのは大前提ですが、凄惨な現場での作業は視覚的にも刺激が強く、強烈な悪臭や大量のゴミ、害虫などにも耐えられる強い精神力を持っていなければ努まりません。
疫病の流行や孤独死の増加によって需要が増加している特殊清掃ですが、実は行うために必須の資格などはありません。
そのため技術力の伴わない悪質な業者も存在しているのが現状です。
「安価だからと頼んだ業者が技術力に乏しく、臭い戻りが発生。別の業者に頼まなくてはいけなくなり、結局費用が高くついた。」
「作業後に追加料金と称して法外な高額請求をされた」
といったトラブル事例が全国で多数報告されています。
拙い知識・技術の業者や悪徳業者に依頼してしまうと、このように様々なトラブルに巻き込まれます。
こういった被害に遭わないためにも、優良な特殊清掃業者を見極めることが大切です。
事件現場特殊清掃士は一般社団法人事件現場特殊清掃センターが認定している民間資格です。
特殊清掃の実務を行ううえで必要となる心構えや感染症予防の知識、消毒や消臭の技術など、作業を安全に行うための手順と方法を学びます。
「事件現場特殊清掃士」資格の有無は、専門知識や技術力が一定水準以上であることの証明でもあるため、優良な特殊清掃業者を選ぶ際の判断材料になります。
＊参考サイト
事件現場特殊清掃センター
＊関連コラム
「特殊清掃は資格を持った業者に依頼するべき？選び方と注意点まとめ」
特殊清掃が必要な現場というのは、かなり過酷な状況であることがほとんどです。
中にはトラウマになり、PTSD（心的外傷後ストレス障害）を患う人もいるほどです。
精神的苦痛から解放されることは、業者に依頼する大きなメリットといえます。
貸出できない部屋があるのは、マンションやアパートを運営している人にとっては死活問題です。
対処が遅れると、隣接した部屋の住人が退去してしまうことも考えられます。
そこで業者へ依頼すれば、最短期間で原状回復してくれます。
感染症のリスクがあるため、特殊清掃業者は「防護服や防毒マスクを着用する」「外部へ漏らさないように密閉空間で作業を行う」など、徹底した感染症対策を行っています。
悪臭や害虫の被害が近隣にまで拡大し、二次被害が発生する恐れがあります。
場合によっては損害賠償を請求されるなどのトラブルにまで発展することもあるので、迅速な対応が求められます。
ある建物の屋根裏に野良猫が侵入し、そこで亡くなり遺体からウジ虫が湧いてしまっていた現場に居合わせた経験がありますが、その匂いは想像を絶するほど強烈でした。
とても市販されている消臭剤では取り除けません。
臭いを根本から消臭できるのは特殊清掃だからこそ成せる業だと思います。
特殊清掃は孤独死された部屋の原状回復だけでなく、ゴミ屋敷、動物の多頭飼育崩壊、火災・浸水被害後の建物など様々な現場で行われています。
高齢化が進み、単身世帯も増加、自然災害も多く、ペットを飼う人も増えている日本では、今後さらに特殊清掃の需要は高まるでしょう。
利用する機会がないのが理想ですが、いざという時に慌てず速やかに優良業者へ依頼できるように、今の内から特殊清掃のことを知っておきましょう。
高額なイメージのある特殊清掃の相場や費用の算出方法を詳しく解説しているコラムを参考のためにご紹介いたします。
＊関連コラム
「特殊清掃にかかる費用は？間取りから費用を概算する方法をご紹介」
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