孤独死した遺体は体内の細菌やカビなどの微生物によって腐敗し、最終的に白骨化します。
腐敗した遺体から出た体液や悪臭を放置すると二次被害が発生しますので、孤独死現場は早めに発見して対処しなければいけません。
この記事では孤独死した遺体を放置しているとどのように変化するのか、孤独死した遺体を発見したときはどのような行動をとればいいのかについて解説いたします。
人が亡くなると体が冷たくなり、表面が青白くなります。
心臓が停止すると血液の循環が止まり、血液が体の低位置へ移動するためです。
さらに低位置に溜まった血液が皮膚越しに見えるようになります。
この血だまりは死斑と呼ばれます。
そして死亡から2時間以上経過すると、筋肉の収縮が起こって体が固くなります。
これは死後硬直と呼ばれます。
死後硬直は頭部から始まり、8時間ほどで手足の先まで硬直してしまいます。
死後硬直からさらに時間が経過すると腐敗が始まります。
人間の体の中にはもともとバクテリアなどの菌が存在していますが、生きている間は免疫機能によって守られているので体は腐敗しません。
しかし、死後は免疫機能が停止してしまいますので分解が活発になり、遺体が腐敗します。
腐敗は内臓から始まり、体全体に進行します。
腐敗する過程でガスも発生するため、体全体が大きく膨れあがり、個人の識別が難しくなります。
医事出版社より出版された「遺体に携わる人たちのための感染予防対策および遺体の管理」では、膨れた遺体の様子を巨人にたとえ、この変化を「巨人様観」と説明しています。
*参考サイト
【「遺体に携わる人たちのための感染予防対策および遺体の管理」医事出版社】
また、腐敗の進行速度は温度や湿度によって変わります。
室内の温度と湿度が高い真夏は微生物の繁殖が活発になり、遺体が早く腐敗します。
国立保健医療科学院から出版された「災害後の遺体管理 一次対応者のための現場マニュアル」によると、暑い気候下では遺体は12〜48時間以内に腐敗が進み、顔の識別が不可能になると解説されています。
*参考サイト
【「災害後の遺体管理 一次対応者のための現場マニュアル」国立保健医療科学院】
お葬式では亡くなった当日だけでなく、数日後に葬儀を行うときもありますが、遺体が個人の判別ができなくなるほど腐敗していることは滅多にありません。
これは遺体の腐敗を遅らせるため、ドライアイスなどで体を冷やしているためです。
ドライアイスは遺体を冷やして遺体の腐敗を遅らせるだけでなく、腐敗による体液や汚物の漏れを抑えて、遺体の扱いに携わる人たちの感染を防止する役割もあります。
腐敗した遺体はもろくなり、少し動かしただけでも崩れやすくなります。
もろくなった遺体から染み出した体液や血液が壁紙やフローリング、畳に染み付いてしまうとシミができてしまうだけでなく、腐敗臭も残ってしまいます。
さらに体内で発生したガスによって鼻腔から血や体液が流れ出たり、排泄器から汚物が漏れ始めます。
染み付いた体液や汚物も腐敗するため、市販の洗剤では落とせないほど強い悪臭を放つようになります。
染み出した体液の量が多いと、床板を通過して階下まで汚してしまう場合もあります。
外部とのつながりがなかった方の孤独死が発覚するのは、階下に染み出した体液や悪臭によって近隣住民が異変に気づくためです。
さらに腐敗した遺体や体液にハエやゴキブリなどが卵を産みつけ、害虫が大量に繁殖します。
害虫の成長は非常に速く、産まれた虫が次々に卵を産みつける悪循環が発生します。
ハエやゴキブリが窓や壁の隙間から屋外へ逃げると、近隣の家へ侵入し二次被害を与えます。
害虫はフローリングや壁紙の小さな隙間に残った卵も駆除しなければならないため、害虫被害に精通した特殊清掃業者に依頼して駆除してもらう必要があります。
遠方で一人暮らしをしている両親を訪れていたら孤独死していた、という事件は誰にでも直面する可能性があります。
筆者の叔父も一人暮らしをしており、高齢期に差し掛かっているため、突然の事故や病気で亡くなってしまったら早く気付いてあげられるだろうかと不安になるときがあります。
もし孤独死の現場に立ち会ってしまった場合は、どのように対処をすればよいのでしょうか。
倒れている人がまだ生きているか判断できない場合は、救急車を呼びましょう。
早急に救急車を呼び、治療をすれば死を回避できる場合があります。
残念ながら息を引き取っているとわかった場合でも、救急隊員が代わりに警察へ連絡してくれます。
遺体から強烈な腐敗臭が発生している、遺体が溶けているなど、明らかに亡くなっているとわかる場合は警察に通報しましょう。
病死や自然死のように見えても、孤独死は異常死として扱われるため、状況にかかわらず警察へ連絡しなければいけません。
警察に通報すると、警察が遺体の身元の確認や死亡原因の調査を行います。
もし遺体に触ったり、動かしたりすると遺体の損傷や証拠の隠滅につながる可能性があるため、絶対に触らないようにしてください。
検視が必要だと判断された場合は警察が遺体を引き取ります。
遺体の身元や犯罪性の有無をチェックし、問題がなければ死体検案書が作成されます。
検視をしても身元がわからない場合はDNA鑑定が行われます。
警察から遺体の引き渡しの連絡が届いたら、遺族の手で葬儀や火葬の手配を行います。
もしご遺体によってお部屋に汚れや悪臭がついてしまった場合は、被害がこれ以上拡大しないように対処しなければいけません。
特殊清掃業者に依頼して原状回復作業を行ったり、遺品整理も並行して進めます。
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亡くなった人に身寄りがない場合は「行旅病人及行旅死亡人取扱法」という法律に基づき、自治体が火葬を行い、無縁仏として埋葬されます。
無縁仏として納骨された後は、もし遺族が現れても遺骨を取り出せません。
また、生前に親交があまりなかったなどの理由で親族より遺体の引き取りを拒否される場合もあります。
遺体の引き取りは義務ではないため、たとえ血縁が近い親戚であっても引き取りを拒否できる権利があります。
引き取りを拒否された遺体も行旅死亡人として自治体で供養されます。
遺体による汚れ、悪臭被害をなるべく最小限に抑えるためには、孤独死を発生させない、あるいは孤独死が起こってもすぐに発見してもらえるよう、生前から対策を取っておかなければいけません。
家族や近隣にお住まいの方とのコミュケーションをとったり、支援サービスを利用して社会から孤立しない環境作りを目指しましょう。
孤独死は高齢者に限らず、一人暮らしをしているすべての世代に関係がある問題です。
一人暮らしをしている筆者も孤独死による被害で近隣に迷惑をかけないよう、友人や親戚とこまめに連絡を取りあっています。
皆様も社会で孤立しないよう、万が一のときに助けてもらえる関係を作ってみてはいかがでしょうか。
孤独死した遺体は長時間放置されていると腐敗が始まり、体液や血液で部屋を汚してしまいます。
もし孤独死した遺体を見つけた場合は決して触らず、警察に連絡をして事件性がないか調査をしてもらいましょう。
警察により死因と身元が確認されると、遺体は遺族へ引き渡されます。
遺体が引き渡されるまでは葬儀や火葬の手配、特殊清掃などの準備をなるべく済ませておきましょう。