孤独死や事故死によってお部屋が汚れた場合、原状回復として特殊清掃が必要になります。ご遺体から発生した汚れや悪臭は通常の清掃では取り除けず、専門的な薬剤や技術を使用した清掃が不可欠のためです。
今回は原状回復に特殊清掃が必要な理由に加え、どのような状態を目指して清掃をするか、適切な原状回復を行うための業者の選び方についても解説いたします。
原状回復はお部屋を入居時の状態に戻すことを意味します。
ご遺体から染み出した血液や体液によってお部屋が汚れてしまった場合は、入居時のきれいな状態を目指して清掃しなければいけません。
賃貸住宅は原状回復をしなければ次の入居者を募集できないため、大家さんにとっては大きな損失となってしまいます。
一般の薬剤、消臭剤では対処できない汚れや悪臭を除去するためには特殊清掃が必要です。
特殊清掃業者に在籍するスタッフは豊富な作業経験を持っていますので、凄惨な状況と化している現場でも冷静に対処してもらえます。
原状回復は次の4つの状態に戻すことが最終的な目標です。
孤独死や自殺の発見が遅れてしまうと、床や壁に血液や体液が染み込み、人型の痕跡が残ります。
この痕跡は市販の薬剤では落とせず、そのまま残すと次の入居者に強い不快感を与えてしまいます。
特殊清掃では強力な薬剤を使用して痕跡を落としたり、染み付いた場所を部分的に解体して原状回復を行います。
ご遺体から染み出した血液、体液は放置していると腐敗して強い悪臭を放ちます。
血液が床や壁紙の奥まで染み付いていると、市販の消臭剤で臭いを除去しても悪臭が戻り、次の入居者が安心して生活できません。
室内に残った悪臭は特別な薬剤を噴霧して消臭します。特殊清掃で使用される薬剤は、市販の薬剤よりも強力な消臭効果を持ちます。
薬剤でも悪臭がとれない場合はオゾン脱臭機という機械を使用したり、悪臭の発生源に特殊なコーティング剤を塗って封じ込めます。
悪臭に引き寄せられたゴキブリやハエは卵を産み、急速に成長します。
アース製薬の「害虫なるほど知恵袋」では、ハエの卵が産み落とされてから成虫になるまでの期間は2週間だと解説されています。
*参考サイト
【アース製薬「害虫なるほど知恵袋『卵から成虫まで2週間。一生に500個産卵するハエの繁殖力がすごい。』」】
害虫被害は拡大するスピードが速いため早急な対処が必要になります。
床や壁紙の隙間に卵が残されていると、被害が再発する可能性があるため、豊富な作業経験とノウハウを持つ特殊清掃業者に依頼をしたほうが安全です。
次の入居者を募集できるように残置物の撤去、処分も必要になります。特殊清掃が必要になる現場に残された遺品は血液や死臭が染み付いているため、遺族が「すべて処分してほしい」と希望される場合もほとんどです。
特殊清掃業者は遺品を密封してから搬出しますので、残置物から発生する悪臭で近隣住民に迷惑を掛ける心配がありません。
一軒家の場合、原状回復の費用は法定相続人が負担します。
賃貸住宅の場合は、入居者が預けた敷金から費用が差し引かれます。
2015年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」では、適切な管理が行われていない空き家に対する施策が定められました。
この特別措置法により、孤独死が発生した一軒家が倒壊の恐れや衛生上問題がある「特定空き家」として勧告を受けると、固定資産税の軽減措置が受けられなくなる可能性があります。
*参考サイト
【国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法(概要)」】
そのため孤独死、事故死が発生した一軒家は悪臭、害虫被害などによって周辺環境を悪化させる前に原状回復、あるいは解体をしなければいけません。
原状回復に必要な費用はすべて法定相続人が負担します。
次の入居者を募集できるよう、安全に生活できる状態になるまで清掃します。
原状回復に必要な費用は、入居する際に預けた敷金から差し引かれます。被害の規模が大きく、敷金だけでは足りない場合は追加で料金を支払わなければいけません。
しかし、孤独死や事故死による汚損は入居者が故意に汚したものと判断されないため、原状回復費用が遺族に請求される可能性は低いと言われています。
孤独死、事故死によって賃貸住宅が汚染されたときに備え、孤独死保険に加入して損失を防いでいる大家さんや管理会社も増加しています。
プログレスは全国の
エリアで展開中!
現状対応できない地域も一部ございます。
詳しくはお問い合わせください。
一般的な清掃サービスと比較すると、特殊清掃の料金は高めに設定されています。
特殊清掃は一般的な清掃とは違い、特殊な薬剤や清掃機器が必要になります。
さらに汚染状況によっては清掃に数日かかる場合もあり、人件費も高額になります。
汚損被害が拡大している現場では数日に渡り原状回復作業を行います。
室内の残置物が大量にある場合は作業スタッフを増員させなければいけません。
必要な作業や日数が増えるごとに、人件費も比例して増加します。
家電や布団、大型家具などは処分費用が掛かります。
不用品を運ぶための運搬費用をあわせると請求される料金は値上がりします。
業者に依頼する前に遺品を少しずつ処分すれば処分費用を抑えられますが、血痕や悪臭が染み付いた残置物を普段通り処分すると近隣住民とのトラブルにつながる恐れがあります。
特殊清掃では特殊な薬剤や消臭剤、清掃機器を使用します。
現場の状況や業者によって使用する薬剤の種類は異なりますが、強力な効果を持つため市販品よりも高い購入費が掛かります。
さらに汚損や悪臭が強いほど、特別な薬剤や消臭剤を大量に使用するため、特殊清掃の費用が高額になりがちです。
特殊清掃の費用をなるべく抑えるためには、他社との相見積もりが重要になります。
特殊清掃業者に見積書を提示されたときは、不要なサービスが無断で追加されていないか、別途料金が発生していないかを隅々まで確認します。
事前に聞かされていない料金が記載されていれば質問し、詳しく教えてもらえない場合は申し込みを控えましょう。
筆者は祖母が急死した際に喪失感と驚きで非常に混乱し、死亡後の手続きではうまく考えがまとまらず時間がかかってしまった経験があります。
大切な人を亡くして適格な判断ができない利用者に対し、不適切な契約を結ばせようとする悪質な業者による被害に遭わないようにしましょう。
トラブルのない原状回復を行うためには、優良な特殊清掃業者に依頼するのが最善です。
一般の方が市販の洗剤を使って清掃をしても、被害の原因を改善しないかぎり再発のリスクは避けられません。
優良な特殊清掃業者に依頼するためには作業内容だけでなく、過去の作業事例やトラブルの有無を事前に調べておく必要があります。
料金が安いから、といった理由で低価格でサービスを提供している業者に依頼すると、未熟な清掃技術によって被害を改善できないまま原状回復を終えられるかもしれません。
原状回復には遺品整理も必要になりますが、特殊清掃業者によっては遺品整理も依頼できる場合があります。
筆者は祖母が亡くなったとき、自宅にそのままの状態で残されていた大量の遺品の整理に手間取りました。
品目によっては指定の収集場所まで持ち運ばなければならない物も含まれていたため、想像以上に時間がかかった記憶があります。
特殊清掃業者に遺品整理も依頼すれば、大量の遺品も時間や手間をかけずに片付けられます。
孤独死や事故死、自殺により室内に痕跡や死臭が残っている場合は原状回復を行います。
原状回復は部屋を入居時の状態に戻す目的があるため、一般の清掃よりも特別な技術を駆使した特殊清掃が必要になります。
被害を発生させないためには、優良な特殊清掃業者を選定して依頼しましょう。
料金の安さだけでなく、作業事例やサービス内容も比較し、実際に連絡をして接客態度も確かめながら依頼先を選定してください。