親戚や家族が突然孤独死をしたら、部屋の掃除や残置物の処理はどのようにすればいいのでしょうか。
孤独死が起きた部屋は、自力で掃除できません。
発見が遅れた部屋には腐敗臭が充満しており、汚染された空気を吸い込むだけでも感染症にかかるリスクが高いからです。
また、遺体に群がる害虫や害獣によってウィルスや病原菌に罹患する恐れがある他、遺体から染み出た体液や血液を家庭用の掃除洗剤液で落とすのは不可能です。
さらに、現場を目撃したことによる精神的なダメージは計り知れないものがあります。
孤独死の部屋の掃除は、特殊清掃を専門に行っている業者に依頼しましょう。
特殊清掃業者には特殊清掃士と呼ばれる清掃のプロフェッショナルが在籍しています。
特殊清掃業者であれば孤独死や事件、自殺などが起きた凄惨な現場の清掃でも、元の状態に戻してくれます。
孤独死が起きれば一刻の猶予もありませんので、当コラムを読めばすぐ参考にしていただけるよう、次のことを分かりやすくまとめました。
・孤独死が起きた場合にすること
・特殊清掃業者について
・特殊清掃業者に依頼をするメリット
・費用は誰が負担するのか
もし孤独死現場の掃除が必要になれば速やかに特殊清掃業者に連絡をして、故人が安心して旅立てるよう処理を進めてあげましょう。
孤独死の原因は調べなければわかりません。
病気の他、事件や事故の可能性もあるため、遺体を発見したらまずは警察(110番)に通報してください。
もし遺体を発見したら気が動転し、何をしていいか判断できなくなると思います。
それが親や家族ならなおさらです。
孤独死を発見したときにすることを順序通りに説明しますので、落ち着いて、焦らず冷静に対処しましょう。
孤独死を発見したら警察に連絡しましょう。
遺体を見ただけでは死亡原因はわかりません。衰弱死、自殺、または他殺など事件に巻き込まれたケースも考えられます。
通報後は次の点に注意してください。
・部屋にある物を触らない
・遺体に触れない
・窓を開けて部屋の換気をしない(死臭が近隣に流れ出る)
たとえ自然死でも、医師が看取らない限りは異常死として扱われるため、警察の現場検証が終わり自然死と認められるまでは家族や親族でも現場への立ち入りは許可されません。
部屋の物を触らないように気をつけましょう。
もし生死の判断がつかなければ、迷わず救急車(119番)を呼んでください。
警察は現場検証後に警察署で検視等を行い、死亡原因を特定した後に故人の身元確認を行います。
身元が確認されると、遺体は遺族に引き渡されます。
もし家族や親族の連絡先を知らない人が遺体の発見者だった場合、家族は警察からの連絡を受けて初めて死亡を知ることになるかもしれません。
身元がすぐに判明しない遺体は専用の遺体安置所に保管され、保管料(1泊2,000円程度)は後日遺族に請求されます。
一般社団法人日本少額短期保険協会が発表した「第5回孤独死現状レポート」によると、孤独死の第一発見者は管理人が27.1%と最も多く、福祉課の担当員や配達業者、警察、消防などを含めると「職業上の関係者」が全体の51.3%を占めているのが分かります。
賃貸物件では管理人や隣人が遺体を発見するケースがほとんどのため、孤独死の発生から発見までの平均日数は17日間と、かなりの時間がかかっています。
孤独死の場合は身寄りのない方も多くいらっしゃいます。
連絡できる家族がいない場合は、警察に説明してから役所の保健福祉課や市区町村の民生委員などに連絡をすると、火葬や清掃など必要な手続きを進めてくれます。
参考:一般社団法人日本少額短期保険協会「第5回孤独死現状レポート」
現場検証が始まった時点で、特殊清掃業者に相談をしましょう。
現場検証後は室内への立ち入りが可能です。
「家族で掃除できるのではないか」と思うかもしれませんが遺体はすぐに腐敗してしまうので、自力で清掃できるのは死後数時間が限度です。
孤独死の部屋では血液や体液が床材に染み込み腐敗臭も付着して残っているため、家庭用の洗剤や消臭剤で除去しようとしてもできません。
さらに感染症などに罹患する危険性もあります。
家族で掃除や片付けを試みるのは避け、現場検証が始まった時点で特殊清掃業者に連絡を入れ、検視・遺体引き渡し後の清掃について相談しておくと良いでしょう。
孤独死が起きた部屋の掃除は現場検証が終わり、警察の許可をもらってから始めましょう。
特殊清掃業者が部屋の消毒と掃除をしてくれます。
遺体の腐敗が進んでいると、ウジ虫やゴキブリ、ハエなどの害虫や、ネズミなどの害獣が室内で大量発生しているので駆除しなければなりません。
駆除が終われば、感染症予防のために消毒作業を行います。
家財道具などを外に運び出してから特殊な洗剤で家の中の汚れを除去し、塩素系の消臭殺菌剤で臭いを取り除きます。
現場の状況によっては解体工事やリフォームが必要になる場合もあります。
特殊清掃業社は清掃から数日後に再び現場を訪れ、害虫や害獣、臭いが再発していないか部屋の状態を確認してくれるので安心して任せられます。
部屋の掃除が終わったら、遺品の整理と残残置物を処分します。
ほとんどの特殊清掃業者は残置物の処分・廃棄に対応してくれるので、腐敗臭やウイルスが付着している可能性が高い物は引き取りもあわせて依頼すれば効率的です。
また遺品整理を手伝ってくれる業者も多いので、賃貸物件の退去期限や人手不足で思うように整理できない場合は依頼を検討してみると良いかもしれません。
遺族が自分たちで遺品や不用品を処分する場合は、必ず自治体に事情を伝えて回収の可否を確認してください。
何も伝えずに粗大ゴミ回収を申し込んでしまうと、不用品に付着している細菌やウイルスによって回収員に健康被害が及ぶ可能性があり、とても危険です。
また、警察が現場検証をした際に住居の鍵や金品を見つけた場合は、一時的に警察が故人の金品を預かります。
遺体の引き取りが行われる際に遺族に手渡されますが、発見が遅れた場合は腐敗臭やウイルスが付着している可能性があるため、悪臭の強い物は引き取りを避けたほうが良いかもしれません。
部屋の清掃や遺品整理が終われば、葬儀を手配します。
死亡時の状況によりますが、ほとんどの場合、孤独死の遺体は衛生状の理由からすぐに火葬され、お骨の状態で帰郷する流れとなります。
亡くなった方の遺体は一般車両では運べません。
国土交通大臣から許可を受けた事業者が霊柩車を準備し、火葬場まで運びます。
特殊清掃業者は部屋の掃除の他に、遺体の搬送や火葬後の葬儀を請け負っくれる会社も多いので、掃除の依頼とあわせて葬儀のことも相談しておきましょう。
*孤独死現場は解体工事やリフォーム(原状復帰)が必要になる場合も
遺体の発見が遅くなればなるほど遺体の損傷は激しく、建物自体の解体工事やリフォームが必要になります。
体液や血液が床材や畳、壁紙などに奥深く染み込んでいる場合は、床や壁材を取り除いて解体するのが一般的です。
浴室で亡くなっていれば浴槽全体や排水溝などのリフォームが必要になります。
清掃で解決できない場合は、特殊清掃業者が解体工事やリフォームを提案してくれるので相談に乗ってもらい、対処法を家族でよく話し合って決めましょう。
特殊清掃業者は、孤独死や事故が起きた現場の掃除を行う専門職で、高いスキルが要求されます。
特殊清掃業は孤独死の起きた部屋や事故現場など、特殊な状況で適切な清掃作業を行わなければならず、高度な知識と経験がスタッフに求められます。
事件現場特殊清掃士の他、防除作業監督者、臭気判定士などの資格を取得するスタッフや1級葬祭ディレクターの資格を持つ人材が多く活躍しています。
高齢化社会に伴い孤独死は今後ますます増加すると予想されており、対処できる人材の育成と確保が喫緊の課題です。
特殊清掃業者が行っている作業は、清掃だけではありません。
・遺体のあった部屋の汚染物質の除去(除菌作業)
・血液や体液、肉片の除去
・消臭作業
・害虫や害獣の駆除
・残置物の処理(不用品処分、遺品整理)
・室内の解体工事
・リフォーム工事(原状回復作業)
このように作業を広く請け負っています。
・孤独死が起きた部屋
・事件で亡くなった部屋
・自殺があった部屋
・ゴミ屋敷
一般的に部屋の掃除を行うハウスクリーニング業者や不用品回収業者では対応が難しいため、特殊清掃を専門に行う特殊清掃業者が依頼を受けて掃除を行います。
特殊清掃は緊急性が高いため、24時間年中無休で対応している業者が多く、早ければ最短即日で駆けつけてくれる業者もあります。
部屋の状態によって数十万円~100万円以上と幅があります。
業者によっても間取りや作業別、回収量などで料金設定や算出方法が違い、原状回復までの作業をどこまで行うかによっても異なるからです。
一例として【間取り別】と【作業別】に分けて費用相場を紹介します。
あくまで目安となるため実際の料金とは異なります。
参考としてご確認ください。
*間取り別の特殊清掃費用の相場
間取り | 費用 |
1K | 30,000円~ |
1LDK | 70,000円~ |
2LDK | 120,000円~ |
3LDK | 170,000円~ |
4LDK | 220,000円~ |
*作業内容別
作業内容 | 費用 |
汚物除去 | 54,000円~ |
害虫駆除 | 13,000円~ |
消臭・消毒 | 32,000円~ |
特殊清掃は消臭作業や害虫駆除から原状回復工事まで多岐にわたるため、費用相場も決まっていません。
特殊清掃業者を利用するときに具体的な料金を最初に聞いておくと良いでしょう。
ほとんどの業者で無料見積もりをしてくれるので利用をおすすめします。
また、特殊清掃後に葬儀などが必要であれば対応してくれるかをあわせて確認しておきましょう。
作業は、全工程で2~3日程度かかります。
特殊清掃で1~4時間程度、害虫駆除や除菌・消臭作業などが必要は場合は2~3日かかります。
もし原状回復工事で建物の一部解体やリフォームをするなら工事が終わるまでに数日~1週間程度を要します。
孤独死が起きると異臭がします。
この場合の異臭とは、遺体から出る死臭を意味します。
死臭は遺体の腐敗臭と体内の血液や体液、胃や腸に溜まったガスなどが混ざりあい、強い刺激臭を放っています。
臭いを含め、孤独死が起きた部屋で起こりやすい状況について説明します。
遺体を数日間放置すると体液が染み出して液状化し、布団やマットレスを貫通して床板や畳にまで浸食します。
亡くなる前に吐血をした場合、床や畳、家具に血液が飛散しているかもしれません。
体液は腐敗液とも呼ばれていますが、バイオ系の特殊な洗剤で汚れを取り除き、血液は次亜塩素酸やオキシドールなどの洗剤で除去します。
家庭用の掃除クリーナーでは対処できません。
布団で亡くなっていれば布団から床材にまで体液や血液が浸食し、ハエやウジなどの害虫やネズミのような害獣が集まってきます。
害虫や害獣を介して感染症に罹患する可能性があるため、現場は非常に危険な状態です。
特殊清掃業者が室内を閉め切って清掃・駆除するのは臭いを閉じ込めるだけではなく、害虫や害獣が逃げ出して病原菌やウイルスをまき散らさないようにするためです。
もし遺体を発見しても窓や玄関を開けたり、換気扇を回したりしてはいけません。
もちろん遺体の周りにも危険な病原菌が蔓延しているので、速やかに部屋の外に出て警察に連絡しましょう。
ほとんどの場合、孤独死は腐敗臭が原因で発見されます。
遺体を運び出しても臭いは消えず、特殊なオゾン発生装置や消臭剤を使用しなければ除去できません。
もし床材や壁の基礎部分にまで腐敗臭や体液、血液が染み込んでいれば、消臭作業をしても数日後には臭いが再発します。
腐敗臭がひどいい場合は建物の解体工事やリフォームが必要になる場合もあります。
いまこの記事を執筆中に、私の知人が異臭騒動に巻き込まれた話を思い出しました。
これまでに嗅いだことのないなんとも強烈な臭いが開けっ放しの窓から突然流れ着いて、体内に染みついて取れないんじゃないかと本気で心配するほど強烈な臭いだったと話していました。
鼻を洗っても臭いは消えず、しばらく気持ち悪くて頭痛もひどかったそうです。
異臭の原因は孤独死ではなく、ペットの多頭飼育をしていた飼い主が亡くなった数匹の動物をそのまま放置していたという、なんとも痛ましい話……。
知人曰く、「腐敗臭は日常生活で嗅ぐことのない独特な臭い」がするらしく、彼は全身で体感済みと豪語していました。
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孤独死現場の掃除は、特殊清掃業者に依頼しましょう。
主な理由は次の通りです。
孤独死の場合、死後数日を経て発見されます。
発見に至る原因が「臭い」の場合、遺体の腐敗がかなり進んでいるということです。
死後1日程度で汚れや臭いがひどくなければ自力で処理するのも不可能ではないかもしれません。
しかし、夏場や暖房のついた部屋では死後2日ほどで腐敗臭が漂い始め、冬場でも1週間程度で同様の状態になります。
部屋に染みついた腐敗臭は、市販の消臭剤で対処できない特殊な臭いを放ちます。
臭いだけではなく遺体から漏れ出た体液や血液なども家庭用の洗剤では落とせないうえ、精神的な負担や衛生上の問題を考えると自力で行うのは到底無理です。
孤独死現場では害虫や害獣が発生します。
遺体の腐敗が進むと、ゴキブリやハエ、ウジなどの害虫、害獣が大量に発生します。
害虫・害獣を媒介して伝染病に罹患するリスクがあるだけではなく、繁殖力も高いので同じ建物の別の部屋や近隣の住宅・建物にも被害が及ぶ可能があり、徹底して駆除しなければ永遠に繁殖し続けます。
特殊清掃業者は駆除にも対応しているので、任せるべきです。
ほとんどの業者が遺品整理にも対応しています。
故人の持ち物を遺族の意向に沿って整理・処分してくれ、清掃と同時に行えて効率的です。
臭いや体液などが付着した家財の処分も任せられるので、清掃と一緒に申し込める業者に依頼をすると早く片付きます。
その他にもリフォームや解体工事など、特殊清掃が発生した現場で対処すべき作業に対応してくれるので、依頼をためらう理由は見当たりません。
唯一の懸念事項は費用についてでしょう。
「依頼をすれば高額な清掃費用がかかるんじゃないだろうか」「誰が支払うのか」と懸念されるかもしれませんが、大きな心配はいりません。
亡くなられた方の住まいが広い場合や、遺体だけでなく室内の損傷が激しい場合には原状復帰に費用がかかりますが、
一般社団法人日本少額短期保険協会のレポートによれば、孤独死の原状回復費用の平均額は381,122円となっています。
保険金の平均支払額は299,376円となっており、ほとんどのケースで工事費は保険金で支払われているのが分かります。
孤独死の部屋の清掃費用は基本的に故人の預貯金や加入している保険で支払います。
もし故人の預貯金や保険で支払えない場合は、持ち家と賃貸住宅で清掃費用を支払う責任のある人が異なります。
支払いの責任は「法定相続人」が負います。
法定相続人とは民法で定められた相続人のことで、故人の資産(預貯金・保健など)を相続する者です。
何らかの事情で法定相続人が清掃費用を支払えない場合は、3ヵ月以内に家庭裁判所で相続人放棄の手続きを行う必要があります。
支払いの責任は次の順番通りです。
1.故人本人の資産(預貯金・保険)
↓
2.連帯保証人
↓
3.賃貸保証会社(管理会社や大家が加入する保険も含む)
↓
4.部屋の所有者(不動産管理会社・大家)
順番に確認しましょう。
亡くなった本人の預貯金や保険から支払います。
次が、連帯保証人です。
一般的に賃貸物件に入居する場合には、連帯保証人が必要です。
本人の資産から支払いができない場合は、連帯保証人が責任を負います。
もし孤独死をした人が親であっても家族が連帯保証人でなければ支払う必要はありません。
ただし、その場合は必ず相続放棄をしてください。
家族であることを理由に管理会社や大家さんから費用の請求があったとしても、相続を放棄すれば支払う義務はありません。
連帯保証人が清掃費用を出せなかったり、そもそも保証人がいない場合は賃貸保証会社が支払い責任を負います。
賃貸保証会社とは、賃貸住宅に入居する際に貸借人の連帯保証人を代行する会社です。
賃借人との間で契約を交わし、賃借人が家賃を滞納した場合などに賃借人に代わって家賃を支払う責任を負っています。
「保証人の会社版」と言えばイメージしやすいかもしれません。
連帯保証人や賃貸保証会社が支払えない場合は、管理会社や大家さんが支払うことになります。
傷害保険などに加入していれば、そこから支払われる場合もあります
今回は、孤独死が起きた部屋の処理について紹介しました。
ほとんどの方が親や家族の孤独死について自分事と捉えていないと思います。
しかし高齢化に伴い独居老人の人口増加が進む日本では、もはや他人事ではなくなっているのが現状です。
孤独死が起きた部屋の処理は、次の順序で進めてください。
①警察に連絡する
②警察から家族に連絡がある
③特殊清掃業者に相談する
発見が遅れた孤独死の部屋は凄惨な状態になっています。
衛生面や心理的・精神的な影響も考慮して、部屋の清掃は必ず特殊清掃業者に依頼しましょう。
【特殊清掃業者に依頼する理由】
・死臭や染みついた体液・血液などは専門技術がなければ除去できない
・害虫や害獣が部屋に発生しているため駆除しなければならない
・遺品整理やリフォームなども依頼できる
特殊清掃業者を選ぶときは下記の点に注意してしましょう。
・豊富な実績がある
・見積もり内容が明確
・事件現場特殊清掃士などの有資格者がいる
特殊清掃業者は専門的な清掃技術と知識を兼ね備えたエキスパートです。
亡くなった方と依頼者が安らかに過ごせるようサポートしてくれるでしょう。
孤独死に直面した場合は当コラムを参考にして、落ちついて行動してください。