身寄りのない方が病気や事故などで誰にも看取られず亡くなられた場合、発見が遅れてご遺体の腐敗が進み、特殊清掃が必要になる場合がほとんどです。
ご遺体が腐敗して染み出した血液や体液は一般的な清掃で除去できないため、専門機器や薬剤を使用した特殊清掃が必要になります。
今回は孤独死現場における特殊清掃の重要性や、特殊清掃に必要な費用を誰が支払うべきかについて解説いたします。
日本医科大学医学会雑誌の論文「孤立(孤独)死とその実態」では、孤独死の死因は主に循環器の疾患、自殺、アルコール性肝障害だと発表されています。
*参考サイト
【日本医科大学医学会「孤立(孤独)死とその実態」金涌 佳雅】
一人暮らしの方や近隣の方との交流が少なかった方は、お部屋で亡くなられてしまうと誰かに見つけられにくくなり、警察への通報が遅れてしまいます。
少額短期保険全般に関する相談窓口を開設している日本少額短期保険協会孤独死対策委員会の「第7回孤独死現状レポート」によると、孤独死発生から発見までの平均日数は18日と発表されています。
*参考サイト
【日本少額短期保険協会 孤独死対策委員会「第7回孤独死現状レポート」】
2週間以上経過すれば遺体の腐敗は進行し、室内は悲惨な状況と化します。
そのため孤独死が発生すると大抵、特殊清掃業者への依頼が必要になります。
また、親族が部屋に訪れると亡くなっていた、家賃が支払われないため管理人が部屋を訪ねた、など第三者が運よく気づいて見つかる場合もあります。
誰も訪問しなかった場合でも、室内から発生した腐敗臭や害虫の大量、ポストから溢れるほどの郵便物などの異変によって発覚する場合もあります。
孤独死現場の清掃に特殊清掃が必要な理由として、以下の理由が挙げられます。
放置されたご遺体から血液や体液は、床板や壁紙の奥深くまで染み込みます。染み込んだ血液や体液は強い悪臭を放つだけでなく、被害を再発させます。
そのため表面の汚れや臭いを除去する一般の清掃ではなく、専門技術や機器を使用した特殊清掃が必要になります。
血液や体液、汚物が腐敗した悪臭は強烈です。一般の方が長時間作業をしていると気分を悪くしてしまう恐れがあります。
室内の悪臭を除去しきれていないまま扉や窓を開けてしまうと、悪臭が屋外に漏れて近隣にお住まいの方にご迷惑をお掛けしてしまいます。
特殊清掃業者は、防毒マスクを着用し作業中の悪臭対策を徹底しています。
また、窓やドアを開けない密室での作業にも慣れています。
孤独死現場には人型の痕跡や汚物などが残されており、一般の人が目にすると精神的なショックを抱えてしまいます。
筆者はコラムを執筆するために実際の特殊清掃の作業風景を参考にしていますが、ご遺体による汚損があると予め理解していても思わず目を背けてしまうときがあります。
特殊清掃業者のスタッフはあらゆる状況で発生した孤独死現場での作業を経験しています。
精神的な刺激を受けてトラウマを抱えてしまわないよう、孤独死現場の清掃は専門家に依頼すべきです。
特殊清掃業者によっては室内の痕跡除去、消臭だけでなく、遺品整理サービスもあわせて依頼できる場合があります。
孤独死現場によっては、遺品に血痕や体液が付着しており、悪臭が発生している場合があります。戸別収集に出せない汚れた家具も、業者に依頼すれば引き取ってもらえます。
アパートから退去するため特殊清掃と残置物の撤去を短時間で終わらせたい方は、特殊清掃と遺品整理をあわせて依頼できる業者を選びましょう。
孤独死現場は悪臭や害虫が発生しているため、専門的な清掃が必要になります。
状況によって異なりますが、主に以下の方法で清掃されます。
腐敗した血液や体液を放置しているとハエやゴキブリなどの害虫が引き寄せられます。
害虫を放置しておくと、害虫が運んだ細菌によって病気にかかるリスクが高まります。
さらに窓や壁の隙間から害虫が移動し、近隣にお住まいの方にご迷惑をお掛けする恐れもあります。
そのため特殊清掃によって成虫はもちろん、幼虫や卵も駆除しなければいけません。
布団やベッドフレームなど、血液や汚物が付着した家具を放置していると悪臭が発生します。特殊清掃では搬出中に臭いが屋外に漏れないよう、密封をしてから搬出します。
床や畳、壁紙に付着した痕跡も除去します。表面だけでなく、奥の建材まで染み込んでしまっている場合は解体をして新しい物に交換します。
建材の交換が難しい場合は防臭効果があるコーティング剤を塗る場合もあります。
腐敗臭は一度染み付くと市販の消臭剤では除去できません。特殊清掃業者が扱う噴霧器などを使い消臭します。
強烈な臭いの場合、一回だけでは完全に悪臭を除去できない場合があります。
悪臭が強い現場では、日にちを分けて消臭作業を行います。
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戸建てのお家で亡くなった場合は法廷相続人が支払い義務を負います。
しかし、故人が保険に加入していたり、預貯金を残していた場合はそこから工事費用を支払います。
マンションなどの賃貸住宅で孤独死が発生した場合、室内を元の清潔な状態に戻すため、特殊清掃や遺品整理の費用に加え、生前に傷つけてしまった設備のリフォーム費用なども必要になります。
特殊清掃や原状回復作業の工事費用は亡くなった本人の預貯金、保険金で支払います。
ただし、亡くなった方の預貯金や保険金では支払いきれない場合は次の責任者である連帯保証人に支払義務が生じます。
連帯保証人が支払えない場合は賃貸物件の管理人が加入している補償会社、保険会社が支払います。
孤独死の発見が遅れるほど清掃費用は高額になります。
高い原状回復費用を支払わないようにするためには、誰にも気づかれないまま亡くなる状況を回避する対策が必要です。
全国の自治体ではボランティア団体による声掛けなど、孤独死を防止する取り組みが行われています。
また、民間事業者からも水道メーターや電気の使用量、スマホの使用状況などをモニタリングし、万が一のときに遠方のご家族に伝えてくれる見守りサービスが提供されています。
市区町村や民間事業者のサービスだけでなく、一人暮らしをされているご自身が積極的に地域の活動に参加して、交友関係を築いておくことも孤独死対策の一つになります。
筆者の祖母は遠方に一人で住んでいましたが、普段から地域のイベントや活動に参加していたおかげで広い交友関係を築いていました。そのため農作業中に大怪我をしたときでも祖母の友人が連絡してくださり、迅速に病院へ向かえました。
交友関係が広がれば社会からの孤立を防止できるだけでなく、孤独を感じないより充実した人生を送れます。
孤独死によって発生した悪臭被害、害虫被害は専門技術を持つ特殊清掃業者でなければ対処は困難です。
特殊清掃業者に依頼すれば二次被害が発生しないよう原因から解決してもらえますので、ご自身で対処しようとせずに業者に原状回復を任せましょう。
また、清掃後は亡くなられた方のご冥福をお祈りも忘れないようにしてください。
誰にも看取られずに亡くなられた方が安らかに眠っていただけるよう、死後の世界での幸せをお祈りしてあげましょう。