特殊清掃は人が住めない状態にまで汚染が拡がった部屋を原状回復する作業で、遺品整理は故人の荷物を仕分けし、不用品を処分する作業のことです。
どちらも不用品の処分や清掃を行うことから混同されることもありますが、実はまったく別の作業です。
このコラムでは特殊清掃と遺品整理について説明し、その違いを詳しく解説するとともに、特殊清掃が必要になるケースや孤独死問題の現状をお伝えします。
血液や体液などの腐敗、菌やウイルスによる感染症の危険性、害虫の大量発生、染み付いた悪臭など、汚染が酷くて立ち入りが困難な現場を、人が健康上問題なく過ごせる状態まで原状回復させる作業のことで、専門業者によって行われます。
消毒や消臭、害虫駆除など、状況や程度に応じて薬剤を使い分ける専門的な知識を必要とします。
悪臭やウイルスの拡散によって近隣住人に健康被害が出る恐れもあるので、迅速な対応力と高い技術力が求められます。
・除菌・消毒
・消臭
・汚染箇所の除去
・害虫駆除
・清掃
・その他(不用品の処分など)
一般でも手に入る洗剤や機器を使用して、エアコンや浴室をはじめとした建物の内外部の汚れを丁寧に落とし、清潔な状態に整えるのがハウスクリーニングです。
重度の汚れも取り扱いますが、人が住めない状態の部屋には対応できません。
それに対して特殊清掃は、汚染が酷くて人が住めない状態の部屋を原状回復します。
遺品を故人の遺志や遺族の要望に沿って仕分け、整理したり処分したりする作業のことです。
必要があればお焚き上げをするなど、遺品の供養も行います。
遺族にとっては、遺品を通じて大切な人との思い出と向き合い、心の整理を行う時間でもあります。
・遺品の仕分け(残す品・処分品・形見分け品など)
・遺品の処分(品物によっては査定・買取も可能)
・遺品の供養
・清掃
・各種手続き(ガス・水道・電気といったライフライン契約の解約、名義変更など)
特殊清掃を行う状況として代表的なのが、孤独死され発見が遅れてしまった部屋です。
必然的に遺品を片付ける機会も多くなること、さらに清掃も作業に含まれますので、特殊清掃と遺品整理を混同してしまう方も度々おられます。
しかし、遺品整理は荷物の整理を目的としており、特殊清掃は汚染された部屋の原状回復を目的としているので作業としてはまったく別物です。
遺品整理 | 特殊清掃 | |
作業する日程 | 特に決まりはありません | 放置するほど悪化するため、早期対応が必要です |
作業に必要な時間 | 自分でする場合:数日~1か月程度 業者に依頼する場合:数時間~2日程度 |
専門業者:3日~7日程度(臭いなどの程度による) |
業者依頼の相場 | 1K:4万円~ 1LDK:6万5千円~ 3LDK:15万円~ ※広さや荷物量によって変動 |
1K:6万~30万円 1LDK:30万~50万円 3LDK:50万円~(数百万円になることも) ※広さや汚染度によって変動 |
遺品整理は自分たちだけでも行えますが、特殊清掃が必要な現場は感染症などの危険性もあるため専門業者に任せるしかありません。
特殊清掃が必要な現場の場合、放置すればするほど状況は悪化します。
原状回復に掛かる費用もどんどん増えてしまうので、すぐに対応することが大切です。
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ほとんどの人が「特殊清掃」といえば「孤独死」という認識なのではないでしょうか。
確かに、特殊清掃業者への依頼で多いのは「発見が遅れた孤独死」の現場です。
しかし、他にも特殊清掃が必要になるケースはあります。
それが「ゴミ屋敷」「感染症のクラスターが発生した現場」「火災現場」「動物の多頭飼育崩壊」です。
亡くなられて数日が経過している場合、遺体から体液や血液が染み出し、腐敗が進んでいると考えられます。
悪臭、害虫の発生、感染症の危険性があります。
生ゴミが腐敗し、悪臭や害虫が発生しているような酷いケースでは特殊清掃が必要になります。
現在は5類感染症に移行され、対応が変わった新型コロナウィルス感染症ですが、以前はクラスター発生がニュースになり、施設を一時閉鎖して除菌・消毒作業を行っていたことは記憶に新しいと思います。
このように感染症のクラスターが発生し、感染が拡がる恐れがある場合は特殊清掃による除菌・消毒が必要になります。
火災後の現場には煤や有害物質が残っており、専門的な除去作業が必須です。
焦げた臭いも通常の掃除では落ちません。
消火のために水浸しになってしまった物や焼けたり熱で使用できなくなった物の処分など、作業は多岐に渡ります。
犬や猫などを飼育・繁殖させ、十分な世話ができなくなった現場です。
ブリーダーが飼育を放棄していなくなる、飼い主が入院や孤独死をしてそのまま放置されてしまうなど、発生原因は様々です。
餓死した動物の遺体や糞尿がそのままにされているなど、悲惨な事例も報告されています。
特殊清掃の需要は今後も増え続けると予想されています。
背景には核家族化や生涯未婚率の高まり、少子高齢化による高齢単身世帯の増加と孤独死問題があります。
厚生労働省の発表によると65歳以上の人が暮らす世帯の中で、単身世帯の割合は31.8%(2022年)にも上ります。
つまり高齢者の3人に1人は一人暮らしをしているということです。
調査を始めた1986年時点では13.1%、2001年では19.4%であり、増加の一途を辿っています。
また、それに比例するように孤独死も年々増加してることが東京都監察医務院の調査結果で明らかになっています。
東京都特別区内で孤独死を迎えた人の人数は、調査が開始された2003年では2,861人だったのに対して、2020年には6,096人にまで増加しています。
2020年に孤独死を迎えた6,096人の内、なんと約70%が65歳以上の高齢者でした。
これらのことから、孤独死問題は決して他人事ではないとわかります。
今この時にも孤独死はすぐ身近で起こっているかもしれませんし、私たち自身や家族がそうなることも考えられます。
近年では行政による高齢者の見守り活動や民間業者による見守りサービスも増えてきました。
こういったサービスを上手に利用しつつ、家族や知人とマメに連絡を取る、趣味や地域のコミュニティに参加し社会と少しでも関りを持つなど、自分達でもできることを考えて行動することが大切ではないでしょうか。
*参考サイト
【2022年国民生活基礎調査の概況 65歳以上の者のいる世帯の状況(厚生労働省)】
【東京都監察医務院で取り扱った自宅住居で亡くなった単身世帯の者の統計】
特殊清掃と遺品整理は、「不用品の処分」「清掃」などの共通点はあれど、目的も実施する作業もまったく別のものだということがおわかりいただけたかと思います。
特殊清掃を依頼するような事態にならないために予め対策をするのが何よりも重要ですが、もしそのような状況になってしまったら一刻も早く対処しましょう。
しかし、焦るあまり悪徳な業者に騙されるなどのトラブルに巻き込まれてはいけませんので、業者選びは慎重にしたいものです。
特殊清掃のトラブル回避に役立つコラムをご紹介しますので、気になる方はぜひご一読ください。
*関連コラム
【『特殊清掃のトラブルとは?回避方法をあわせてご紹介』】