一人暮らしをされていた方が孤独死された場合、持ち家などの財産は法定相続人や遺言書で指定された人が相続し、身寄りがない方の財産は国庫に入ります。
今回は孤独死された方の持ち家の片付け方や、孤独死が発生した住宅を相続すべきかどうかについて解説いたします。
孤独死された方にご家族がいた場合、相続人として持ち家を引き取ります。
孤独死が発生し、住んでいる人がいない空き家となった場合でも、持ち家を相続した家族には固定資産税などの税金が課せられます。
相続をした家族は家を活用していなくても、維持費や固定資産税を支払わなければいけません。
孤独死による室内の汚損や悪臭被害が大きい場合は特定空き家に認定される可能性があります。
特定空き家に認定されると、固定資産税の優遇措置が適応されないため、さらに課税額が高くなってしまいます。
身寄りがない人でも、生前に遺言書で持ち家の相続人を指名していれば親族以外の人に相続できます。
持ち家を相続する人が誰もおらず、遺言書もない場合は相続人不存在となり、家庭裁判所から相続財産管理人が選任されます。
相続財産管理人とは亡くなった方の財産を代わりに管理する人のことで、通常は各地域の弁護士が担当します。
この相続管理人が相続人や相続債権者を捜索しますが、見つからなかった場合、財産は国庫に引き継がれます。
遺体は警察が引き取ってくれますが、遺品は相続財産管理人が処分しなければいけません。
遺品整理業者に依頼し、遺品整理と不用品の処分を委託する場合もあります。
孤独死があった持ち家は解体して更地にする、不動産会社の仲介で売却する、買取に出すなど様々な方法で手放せます。
令和2年2月に国土交通省が定めた「宅建建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」では、孤独死が起こった物件や土地を売却する際に、病気や老衰などの自然死によって亡くなられた場合は事故物件として告知する必要はないとされています。
しかし、遺体の発見が遅れたために解体工事や消臭作業などの特殊清掃を行った場合は告知が必要になると決められています。
また、事件や事故、自殺が発生した物件も告知義務が発生します。
*参考サイト
【国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」】
凄惨な事故、事件が起こった住宅はそのままの状態で売却できません。
染みついた汚れや臭いを落とすために特殊清掃やリフォームが必要になりますが、更地にして土地として売却したほうが費用を抑えられ、買い手が現れやすくなります。
建物を解体したほうが事故の印象を和らげることはできますが、更地で売却する場合も、孤独死が起こった事実は告知しなければいけません。
また、建物を解体すると財産処分に該当するため相続放棄ができなくなります。
この点を踏まえてよく検討しましょう。
一般的な物件と同じように、事故物件は不動産会社の仲介でも売却できます。
事故物件の取り扱いに慣れた不動産会社も存在しますので、確かな実績やノウハウを持つ不動産会社に依頼をすれば高値で売却できる可能性もあります。
業者には得意とする地域や建物の種類があるため、複数の業者へ相談し比較するとよいでしょう。
仲介によって売却する場合は購入希望者が現れるまで物件を手放せないため、購入希望者が現れなかった場合は長期間管理をしなければいけません。
事故物件をすぐに手放したい方は他の方法を検討したほうがいいかもしれません。
事故物件はなかなか購入希望者が現れません。
売却がうまくいかない場合は、不動産会社に買取を相談しましょう。
買取してもらえれば広告掲載などの宣伝を行う必要がなく、近隣住民に事故物件の存在を知られずに手放せます。
事故物件を売却する場合、心理的乖離物件として相場よりも買取価格が下がりますが仕方ありません。
買取を希望する場合は少しでも高く買い取ってもらえるよう複数の不動産会社に見積もりを依頼しましょう。
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もしご両親や親族が孤独死された場合、持ち家を相続すべきか、売却すべきか悩まれる方もいらっしゃると思います。
筆者の父親は山奥で生活していますが、もし父親が亡くなったときは実家を相続すべきか決めかねています。
交通の便が悪い山奥にある実家で生活を続ける自信がなく、空き家として保有するにも維持費を払い続ける余裕がないためです。
持ち家の相続に悩んだ場合は、以下のポイントを参考に判断してください。
相続は財産だけでなく、借金などのマイナス財産も相続しなければいけません。
消費者金融からの借り入れ、銀行からの融資など、孤独死された方が借金をしていた場合は相続放棄をするのが適切な対処方法です。
契約書が見つからない場合でも、ポストに溜まった催促状のハガキや差し押さえの手紙などで借金が発覚する場合があります。
孤独死された方の持ち家を相続するか悩んでいる場合は、査定をして価値を確認することもできます。
査定行為は財産を処分したり持ち帰ったりすることに該当しないため、不動産の価値を確認してから相続するかどうかを決められます。
身寄りのない方が生前に済ませておくべき対策を紹介します。
自分が亡くなった後に近隣にお住まいの方や賃貸住宅の管理人に迷惑を掛けてしまわないよう、事前に対策を取り安心して生涯を終えられるようにしましょう。
財産は法律で定められた法定相続人が相続することになりますが、法定相続人の中に自分が望まない人が含まれている場合もあります。
また、親族ではなく生前親しかった人に財産を相続してほしいと希望される方もいらっしゃいます。
遺言書とは自分の死後に財産をどのように相続させたいかを記載する書類です。
身寄りのない人は遺言書を作成しておけば、自分の財産を誰に相続させたいかを明確に伝えられます。
2021年2月にNPO法人ら・し・さが発表した「終活意識全国調査」の結果によると、60歳以上の回答者のうち遺言書を作成している方は全体の6.6%のみでした。
しかし、2019年から2020年にかけて、自筆証書遺言の作成方法および保管についての改正があり、以前よりも作成しやすくなったため、今後遺言書を書く人は増加すると予想されています。
*参考サイト
任意後見契約とは、自分が認知症などの障害により判断能力が低下した場合に、自分の財産や身の回りの世話をしてくれる人(任意後見人)を決めておく契約です。
身寄りのない人は任意後見契約を締結すれば、自分の判断能力が低下した場合も財産の管理や医療契約などを任せられます。
お墓や葬儀の準備も自分で手配しておく必要があります。
最近では自分が生きている間にお墓を建てたり、葬儀の生前予約を受け付けている業者も存在します。
葬儀をしなくても火葬代は必要なので、喪主となる方に迷惑を掛けないよう、ある程度は貯蓄をしておきましょう。
お墓や葬儀を元気なうちに準備しておけば、いざというときも慌てずに済みます。
筆者は父親の希望を最大限実現できるようお墓や葬儀の形式を決めましたが、ご家族や相談相手がいない方は終活プランナーや専門業者の力を借りながら決めるのもいいでしょう。
身寄りのない方が孤独死された場合、持ち家などの財産は国に引き継がれます。
親族がいる場合は相続か放棄を選択できますが、孤独死された方の借金や、室内に残された遺品も相続しなければならないことを注意して検討してください。
自分の死後に財産を相続してくれる人がいない場合は、遺言書の作成や葬儀の準備など、最後まで不安を抱えずに生活できるよう対策を済ませておきましょう。