メディアでも度々取り上げられる孤独死問題。
核家族化や少子高齢化が進み生涯未婚率も増加傾向にある現代では、誰もが「自分には無関係」と言い切れない状況です。
孤独死の場合、発見が遅れるほどに対応は困難になります。
少しでも早く気付くためにはどのような点に注意しておくべきか、発見した際にはどう対処したら良いのか、また家族が孤独死してしまった場合の対応などを詳しく説明します。
厚生労働省の発表によると2021年6月時点での単独世帯(一人暮らし世帯)の割合は全体の29.5%。単独世帯の中で65歳以上の高齢者世帯は48.5%を占めており、今後も増加していくと予想されています。
少子高齢化、生涯未婚率の増加が社会背景にあり、単独世帯が増えることに比例して孤独死の発生割合も増えることが容易に想像できます。
日本少額短期保険協会 孤独死対策委員会が2022年に発表した「第7回孤独死現状レポート」によると孤独死者の平均年齢は約62歳で、日本人の平均寿命を大幅に下回っています。
若年層でも孤独死は増加傾向にあり、現役世代と呼ばれる20代~50代が全体の40%にも上っています。
これらのデータを踏まえると、今後も孤独死は増え続けると考えられるとともに「孤独死は高齢者に多い」という一般的な認識を改めざるを得ないでしょう。
参考サイト
【厚生労働省「2021年 国民生活基礎調査 結果の概要」】
【日本少額短期保険協会 孤独死対策委員会「第7回孤独死現状レポート」】
孤独死に陥りやすい人に共通する特徴や傾向について見ていきましょう。
身近な人や自分自身に、以下に紹介する特徴や傾向があると気付けたら些細な変化を見逃すことなく孤独死を未然に防ぐことができるかもしれません。
前章でも紹介した「第7回孤独死現状レポート」によると孤独死者の内、男性が全体の83.2%を占めています。
このことから孤独死しやすいのは女性よりも男性であることがわかります。
特に高齢男性は家事が不得手な人が多い傾向にあり、食事や掃除を疎かにしたことで飢餓や病気につながり孤独死に陥るようです。
高齢者ほど持病を抱えている人も多くなります。
持病が悪化し容体が急変しても、一人きりでは病院に行くのも救急車を呼ぶことも困難です。
風邪など軽視されがちな症状でも持病があると重症化しやすく、食事の準備や買い物も難しくなるため、最悪の場合、死に至ることもあるのです。
厚生労働省が発表した「平成22年 国民生活基礎調査の概況」内の「7 貧困率の状況」によると相対的貧困率は16%。
平成21年の中央値が224万円であり貧困線が112万円。
つまり日本には112万円以下の所得で暮らしている貧困層の人が6人に1人いるということです。
当然のことながら貧困という状況下では食事が満足にできず栄養が偏ります。
病気や怪我をしやすくなるうえに病院に掛かる費用が捻出できず重篤化することもありえます。
参考サイト
コミュニケーションが苦手、家族や友人とも交流を持たないという人は注意が必要です。
孤独死の発見も遅れてしまう傾向にあります。
孤独死の死因で多いのは「病死」次いで「自殺」です。
自殺による孤独死者数は女性が多く、特に20代女性の割合が全体の4割を占めます。
仕事や人間関係に悩み、しかし相談できる人もおらず精神を患い自ら命を絶ってしまうような例が報告されています。
どのような状況なら孤独死の可能性があるのでしょうか。
・ポストに郵便物が溜まっている
・しばらく姿を見かけていないうえに連絡もつかない
・洗濯物が何日も干されたままになっている
・数日間、電気がつけっぱなしになっている
・異臭がする
・害虫が多数発生している
上記のような状況は、住人が元気であればなかなか起こりません。
もしこのような異変があれば孤独死の可能性を考えましょう。
自宅へ訪問する際にはなるべく一人では行かず複数人で行動するほうが良いでしょう。
個人宅の場合は自治会役員や民生委員など町内のことを把握している人に頼るのもひとつの方法です。
住まいがマンションやアパートなら大家さんや管理会社へ連絡し確認してもらいましょう。
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現状対応できない地域も一部ございます。
詳しくはお問い合わせください。
実際に孤独死を発見した人の精神的苦痛は計り知れません。
動揺し判断力も落ちてしまうでしょう。
故人が大切な人であればなおさらです。
しかし、それでも発見してしまったときにはすぐに対応しなくてはいけません。
生死の判断がつかない場合は救急車を呼びましょう。
もしかしたら命が助かるかもしれません。
亡くなっていた場合は警察へ通報します。
このとき遺体を移動させたり部屋の中の物を動かしたりしてはいけません。
事件性の有無を判断し死因を特定するために警察による現場検証・検視が行われます。
あらぬ疑いをかけられないよう無暗に物には触れないようにしましょう。
臭いや汚れがすごくても窓を開けて換気をしてはいけません。
悪臭や害虫が近隣へ広がり、周辺住人に健康被害が出るおそれがあります。
事件性の有無を判断するために警察から発見者への事情聴取が行われます。
死亡原因や身元の確認が取れたら遺族へ連絡され、遺体の確認が行われます。
家宅捜索では死因を調べるのに必要な物が回収されます。
事件性がないと判断されれば貴重品や故人の持ち物は返還され、遺体も引き渡されます。
引き取りを拒否しない限りは遺族が遺体を引き取るのが一般的です。
死体検案書は死亡届の提出時などで必要になりますので、受け取ったら数枚コピーを取っておくと良いでしょう。
複数の葬儀社で見積もりを取り、内容・費用・対応すべてに納得のできるところに依頼しましょう。
遺体の損傷が激しい場合はまず火葬を行い、その後お骨のみで行う「骨葬」で葬儀を行うことが多いようです。
遺体の発見者が管理会社や大家さんで、故人に身寄りがなく天涯孤独だった場合は、行政が葬儀から埋葬まで行ってくれますので役所の担当者に相談しましょう。
警察から立ち入り許可が出たら故人の部屋へ入室できるようになります。
発見が遅れた孤独死の現場では原状回復のために特殊清掃や害虫駆除、リフォームが必要になることもあります。
このような場合はウイルス感染の危険性がありますので入室してはいけません。
特殊清掃の専門業者に任せましょう。
生前使用していた家具や家財がそのままになっていることがほとんどです。
遺品整理を行い、必要であれば現地供養を行いましょう。
死亡届の提出期限は「死亡を知った日から7日間」です。
故人の死亡地あるいは本籍地、または届出人の住所地の役所に届け出ます。
手続きできるのは親族・同居者・家主・地主・家屋管理人・土地管理人・後見人・保佐人・補助人・任意後見人・任意後見受任者のいずれかです。
死亡診断書または死体検案書を死亡届に添付します。
提出期限に遅れると5万円以下の過料が科せられたり、葬儀や埋葬ができない場合もありますので期限内に行いましょう。
健康保険や介護保険、住民税、年金の届出、公共料金やクレジットカードの解約、各種名義変更、その他様々な手続きや届出が必要になります。
故人が社会保険に加入していた場合には「埋葬料」が、国民健康保険に加入していた場合には「葬祭費」が給付されます。
被保険者が亡くなった日から2年以内に申請しなければ無効となりますのでご注意ください。
今後も増えるであろう孤独死。
しかし本人や周りの人が互いに、今より少しだけかかわりを持つようにするだけでも不幸な事態は避けられるかもしれません。
筆者は40代ですが両親や兄弟との会話でも「将来孤独死してしまったら」という話題に度々なります。
「おはよう」程度のメッセージでも互いにしよう、一人になったら見守りサービスを利用しようと話しています。
近年では行政と民間が協力して高齢者の見守りを行っていたり、郵便局や生協、セキュリティー会社が実施する見守りサービスに申し込むこともできます。
民間サービスの場合は有料になりますが、何かあったときに駆けつけてもらえるという安心感には代えられません。
それでも孤独死を発見したり、家族が孤独死してしまう可能性を完全になくすことはできません。
そのようなときに当コラムが少しでもお役に立てることを願っております。