基本的にマンションやアパートなどの一室で人が亡くなった部屋は、事故物件と呼ばれます。新しい生活や引っ越しを考えている時に、検討している家や部屋が事故物件ではないかこっそりと確認した方もいるのではないでしょうか。
では、孤独死の場合は事故物件になるのでしょうか。孤独死の条件は「一人でひっそりと亡くなる」ことと言われているため、事件性はありませんが、一室で人が亡くなっていることは確かです。
今回はそんなマンションやアパートなどで孤独死が発生したとき、事故物件と呼ばれるのか、そしてそんな孤独死に直面した場合、大家さんはどのような対応を取り、進めていくのが良いのか紹介します。
まず始めに、孤独死が事故物件であるかを紹介する前に、マンションでの孤独死がどれほど発生するのかを紹介します。
民間の調査機関「ニッセイ基礎研究所」の2018年の報告では年間の孤独死の数は2万6821人と報告されています。また、少子高齢化や独身世帯の増加により、年々増えていくとも言われています。
そして、孤独死は一人暮らしをしている限り誰でも起こりうる可能性を秘めています。その理由が孤独死の条件です。条件は先ほども紹介しましたが、「一人でひっそりと亡くなる」ことだけです。つまり、年齢が若くても死因がどんなものでも一人でひっそりと亡くなれば、基本的には孤独死になるのです。
そのため、マンションなどの集合住宅で一人暮らしがある限り、孤独死の可能性を0%にはできません。集合住宅の大家さんは「孤独死は起きるもの」と認識しておく必要があるのです。
では、この頻繁に起こる孤独死は事故物件になるのでしょうか。
先に結論を申し上げると、状況次第です。
まず、どうして状況次第であるのかを紹介する前に、事故物件とは何なのかを紹介します。
事故物件とは明確には定められてはいませんが、国土交通省の「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」によれば、「自然死や不慮の事故死以外の死」が借主、売主に告知する境界線(事故物件)と定めています。そのため、自殺や他殺は事故物件にあてはまり、老衰や病死などはあてはまりません。
ただガイドラインには、もう一つ条件があり、「原則として特殊清掃が行われて3年間」という項目も存在します。老衰によって亡くなったが発見が遅れ、部屋が汚染されているなどの状況が起こった場合は、特殊清掃が必要になるため3年間は事故物件です。
つまり、簡単に分けると、孤独死の中で特殊清掃が必要なほど部屋の状況が悪化した部屋は事故物件、必要のない部屋は事故物件ではありません。
・自殺(基本的には孤独死とは呼ばれない)
・原因不明の死
・特殊清掃が必要とされる死(原則3年)
など
では次に、孤独死が起きた場合、大家さんに告知義務があるのでしょうか。
基本的には先ほどの「特殊清掃が必要かどうか」が争点です。
特殊清掃が必要であれば告知する義務が生じますし、特殊清掃の必要がなければ、告知義務はありません。
ただ、例外として軽度であれば告知義務はないようです。主なケースとしては、4カ月間遺体が放置され、腐敗が進んでいたケースは告知義務があるとされ、病死によって4日間遺体が放置されたケースは告知義務がないという前例があります。
ただ、死因や気温、環境で状況の良し悪しは変わるため、「4日間以内であれば絶対に事故物件ではなく、告知義務もない」ということにはなりませんので、お気を付けください。
プログレスは全国の
エリアで展開中!
現状対応できない地域も一部ございます。
詳しくはお問い合わせください。
では次に、マンションでの孤独死が発覚したらどう進めていけばよいか、大家さん目線で紹介します。
状況から孤独死とはっきりとしていても、自己判断のみで進めてはいけません。発見した際は110番をして、孤独死の可能性があると警察に伝えましょう。もちろん生死の状態が把握できない場合は、119番をして救急車を呼びましょう。また、事件の可能性もあるため、室内の物は触らないようにしましょう。
死亡が確認されたら、連帯保証人に入居者様が亡くなった旨、賃貸契約の解除の手続きの旨、原状回復が必要である旨(部屋が全く汚れていない場合は必要ない)を伝えましょう。
孤独死の現場は、誰も亡くなった瞬間を見ていないため、他殺の可能性も考えられます。そのため、警察は事件性の有無を検証しなくてはならず、検証中は室内に立ち入ることはできません。
また身元をはっきりさせるために、医師や検察官の元、遺体の検視を行います。事件性があると考えられる場合は、検視は長期間かかります。
検視などをしているタイミングで、連帯保証人やご遺族などと原状回復(特殊清掃)、遺品整理についての話し合い(費用面、依頼はどちらが進める、明け渡しまでの家賃、遺品整理の進め方)を進めます。
ご遺族のことを考えると酷に思えてしまうかもしれませんが、部屋を放置し続けると、さらに高額の特殊清掃費用が掛かってしまい、お互いに損になってしまうので、早めに話し合いましょう。
汚れや臭いがある場合は業者に依頼をし、特殊清掃を進めてもらいます。また、遺品整理もご遺族が進められない場合は、業者などに依頼をし、進めてもらいます。
賃貸契約の解除を進めます。その後、孤独死によって起きた特殊清掃の料金の精算を行いましょう。ただ、孤独死は基本的に事故死ではない不慮の死であるため、孤独死で汚れたとみなされる場所のみの請求しかできません。
このように、特殊清掃の必要な孤独死を集合住宅で引き起こしてしまうと、基本的に高額な特殊清掃の負担が親族に降りかかり、事故物件の告知義務を大家さんは迫られるので、お互いに不幸になってしまいます。
そのため孤独死を未然に防止する必要があります。その防止策を紹介します。
大家さんが入居者に頻繁に声掛けを行っていれば、もしもの場合にすぐに気が付くことができます。また、孤独死の入り口となる、認知症やセルフネグレクトなどを初期症状の段階から察知できるでしょう。
民間業者の中には、水道の検診や郵便配達などすべての住居にまんべんなく訪問する業者が存在します。そのような業者の中で、民間の見守りサポートを行っているところがあります。水道のメーターが定期的に動いているかなどで、問題はないか確認し、異常がみられる場合はすぐに通報してくれます。
自治体でも孤独死防止のためのサービスを実施しているところが存在します。
住居のある自治体のサービスを確認してみるのも良い方法です。
これは、未残に防ぐことではありませんが、孤独死した際の特殊清掃費用などの多額の請求を賄うための「孤独死保険」が存在します。孤独死保険は保険それぞれで多少補償内容は異なりますが、基本的には部屋の原状回復費用の保証を行ってくれます。また、加入者も大家さんだけでなく、入居者が加入するものもあります。
これらの対策を進めておくと、孤独死を未然に防ぎ、もし起きても慌てずに進められるようになるはずです。
マンションやアパートなどで人が一人暮らしをする限り、孤独死を完全に防ぐことはできません。そしてその孤独死の放置は、孤独死した方も、大家さんも親族もすべての方が不幸になる事故物件へと変貌を遂げます。
そのため、声掛けなどを忘れず、お互いに支えあいましょう。
この記事が少しでも役立てば幸いです。お読みいただきありがとうございました。