一般的に孤独死が発生すると特殊清掃が必要です。しかし、特殊清掃はそう何度も経験するものではないため、どれほどの清掃費用が掛かり、その金額を誰が払うかをはっきりと理解していないものです。
今回はそんな孤独死が発生した際の清掃費用は誰が払うかを中心に、特殊清掃の責任と相場について紹介します。
ではまず始めに、孤独死とはどういうもので、どのような被害があるのでしょうか。
孤独死とは誰にも看取られない状態で一人亡くなることを指し、条件はこれだけです。つまり、高齢の方が病院で亡くなった場合は孤独死ではなく、若い方が部屋で一人亡くなった場合は孤独死なのです。年齢や死因などは全く関係がありません。
そして、被害は遺体の放置により発生します。遺体の放置は細菌による腐敗を引き起こし、悪臭や汚れなどの問題を発生させます。さらに長期間の放置は害虫や害獣を呼び寄せ、高額の清掃費用へとつながります。
また、孤独死の中には孤立死と呼ばれるものも存在しています。孤立死とは孤独死の条件下で、社会的な孤立があることと言われています。社会的な孤立を引き起こした状態で孤独死が発生すると、当然遺体の放置される期間は長くなるため、害虫の発生や臭いの付着など、清掃費用が高額になる原因が増えます。
では次に、孤独死が起きた時に発生する作業内容について紹介します。
孤独死が起きた場合、主に行うことは2つです。
・部屋の原状回復(特殊清掃)
・残置物処理(遺品整理)
詳しく紹介していきます。
一般的に特殊清掃と呼ばれる作業です。先の章で説明した、孤独死によって遺体が放置されることで発生する悪臭や汚れ、害虫の駆除などに対応します。
また遺体の放置が長期化する孤立死では、遺体から漏れ出た体液や血液が壁や床に染み込み、そこから臭いが発生してしまうケースも存在します。そのような場合は、壁や床の張替えを行う、解体工事も必要になります。
原状回復の平均費用は389,594円です。(参考:第6回孤独死現状レポートより)
孤独死の発生でするべきことは特殊清掃だけではありません。部屋に残された残置物(遺品)の処理(整理)も必要です。ただ、遺品と言ってもお宝のような遺産ではなく、誰が見てもわかるゴミの場合もあります。そのため、特殊清掃前にある程度の残置物処理(遺品整理)を進める必要があるケースも存在します。
そして、遺品の扱いは注意が必要です。遺品は相続の対象となるため、基本的に相続人や連帯保証人以外の方が処分することができません。つまり、どんなゴミであろうとも遺品である限りは、遺族の方や保証人の方が責任をもって指示を出し、整理していく必要があるのです。
残置物処理の平均費用は235,865円です。(参考:第6回孤独死現状レポートより)
このように、孤独死が発生した場合は特殊清掃だけではなく、遺品整理も必要となるのです。
孤独死の作業内容と費用は思いのほか幅広く、高額であると思った方も多いのではないでしょうか。ではこれらの清掃費用はいったい誰が払うのでしょうか。
先に結論を申し上げてしまうと、賃貸で孤独死が起きた場合にお金を払う方は
・連帯保証人
・法定相続人
・孤独死の起きた物件の持ち主(大家さん)
の順に責任が及びます。
※家が孤独死された方の所有物である場合は、法定相続人に責任が及びます。
連帯保証人とは物件を借りた方が債務(家賃など)を支払えなくなった場合、代替わりする義務を持つ方のことです。孤独死などの原状回復にも、家賃同様同じことが言えるため、連帯保証人は部屋を汚した債務を代替わりしなくてはなりません。そのため、特殊清掃の費用はまずこの連帯保証人が引き受けます。
連帯保証人が亡くなるなどの理由で責任を果たせない場合、法定相続人に責任が移ります。法定相続人とは、亡くなった方の遺産を相続する方のことであり、多くの場合、亡くなった方の親族です。ただ、親族の中(法定相続人の中)でも順位が定められており、基本的には配偶者、子、親、兄弟の順番で決まります。
基本的には連帯保証人と法定相続までで誰が払うかは決まるのですが、大家さんに責任が及ぶ場合も存在します。
主なケースとしては、法定相続人が相続放棄した場合や孤独死された方が全くの孤独の身であり、身寄りが見つからない場合などです。
また、孤独死の原因が自然死である場合は、借りた側(孤独死した方)の過失ではないと認められるため、その部分だけの回復費用しか請求できないことが大半です。
このように、孤独死の清掃費用は、基本的には連帯保証人が進めるものではありますが、死因によっては大家さんが一部負担する場合も存在します。
プログレスは全国の
エリアで展開中!
現状対応できない地域も一部ございます。
詳しくはお問い合わせください。
以上のように、特殊清掃費用は誰が払うか状況次第で変わります。ただ、大家さんは特殊清掃費用の心配以上に、「孤独死でアパートやマンションの家賃などの評価が変わってしまうのではないか」と心配になるのではないでしょうか。
そのため、「損害賠償などは請求できないか」と考えてしまうものです。
ただ、このような損害賠償は基本的には請求できません。
その理由は先ほどの章の大家さんに特殊清掃費用が及ぶ場合と同じで、自然死した場合は借りた側(孤独死した方)に過失はないと認められるからです。ただ、自殺や部屋がゴミ屋敷状態など、借りた側(孤独死した方)に過失が認められるケースは損害賠償が請求できることもあります。
しかし、基本的にゴミ屋敷状態になっている、自殺、孤立死で部屋全体に匂いが付着しているなどの場合がなければ、大家さんは新たに借りる方に孤独死を告知する必要はないと考えられています。つまり大幅な家賃の値下げなどはする必要はありません。
では最後に、このような清掃費用を誰が払うか考えなくてよいようにするために、孤独死を防止、または孤立死状態にさせない方法を紹介します。
民間企業の中には、水道の検診や郵便など定期的に訪問する業者がいます。そのような業者のサービスを利用すると、もしもの場合すぐ異常に気が付くことができます。水道の検診であれば、メーターに専用機器を取り付けることで異常がないか確認するといった方法です。
親族や大家さんが定期的に入居者とコンタクトを取っていれば、何かあった時すぐに気が付くことができます。調子が悪いなどの状況をあらかじめ把握しておければ、孤独死そのものを防ぐことができるかもしれません。
孤独死による清掃費用を補填する保険も存在します。大家さんが加入するものと借主が加入するものがあり、どちらも特殊清掃費用の保証をしてくれます。保険があれば、まず保険から費用を捻出できるので、「清掃費用は誰が払うの」と悩む必要がなくなります。
大家さんでない限り、大半の方が特殊清掃を必要とされるケースに陥るのは親族の孤独死ではないでしょうか。親族の突然の悲惨な死は冷静な判断を失わせます。そのため、不謹慎に思うかもしれませんが突然の時に慌てないように、清掃費用は誰が払う必要があるのか、孤独死の弊害など事前に考えられることをあらかじめ調べておくことも重要です。また、それらのことを考えられれば、おのずと孤独死の防ぎ方もわかり、防止策を講じることで、特殊清掃そのものをなくすことにつながるはずです。
この記事で多くの方が孤独死の清掃費用は誰が払うかを理解し、防止策を講じることができれば幸いです。
お読みいただきありがとうございます。