近年の高齢化社会や核家族化の加速により、一人暮らしかつ親族と疎遠な高齢者が増加しています。そのような高齢者の増加は孤独死の増加を引き起こし、身寄りがないといった理由から、孤独死現場の処理をアパートなどの集合住宅の大家さんが行うケースも増えているそうです。
今回はアパートなどの借家で孤独死が発生したとき、大家さんはどのような対応をとるべきか紹介いたします。
あまり考えたくないことではありますが、大家さんが孤独死の第一発見者になることもあります。そのため、孤独死を発見してからやるべきことを流れ順に紹介いたします。
まず、臭いや害虫などの異変に気が付いた場合は室内を確認します。孤独死が確認できた場合は警察と故人様の親族(保証人)に連絡を入れましょう。警察は事件性の有無を確認し、親族は特殊清掃や遺品整理を進めます。
孤独死の場合、遺体は検視のために警察に引き取られるので、大家さんが遺体の処理をする必要はありません。ただ、部屋に残された死臭の除去や害虫などの駆除が必要です。そのため、特殊清掃業者などに依頼し、部屋の脱臭、害虫駆除、除菌などを進めてもらう必要があります。
これらの部屋の原状回復の負担は日数がたった場合は大家さんではなく、連帯保証人や相続人がまかないます。しかし、連帯保証人をつけていない場合や連帯保証人が他界している場合、生活に困窮しているなどの理由や故人様に莫大な借金があるなどの理由で相続人が相続放棄を行った場合は、部屋の回復の負担がオーナーすなわちアパートなどの大家さんに移るケースもあります。
孤独死の現場には遺品が残されることが大半です。この遺品の整理も進めていかなくてはなりません。ただ、部屋の原状回復と同様、整理の負担は保証人もしくは遺族に任せることになるため、大家さんが負担することはごくまれです。
また、故人様がゴミ屋敷住民であった場合はゴミの除去も進めなくてはいけません。
借主様が亡くなっても、賃貸の契約は生き続けます。基本的に契約は法定相続人へ移るため、大家さんは法定相続人に家賃の請求ができます。
ただ保証人や相続人は故人様の親族であることが大半です。つまり、多くの保証人や相続人は悲しみを抱えたまま警察の検視や死亡届などの行政の手続き、葬儀の準備などと並行して、アパートなどの部屋の原状回復や残置物の処理、家賃などの問題を解決しなければなりません。
そのため、あまり遺品整理や家賃など緊急性の低いものの催促をするのはおすすめできません。保証人や相続人のこともおもんぱかって進めていくのが良い方法です。
では次に、もし孤独死の原状回復(特殊清掃と遺品整理)をアパートなどの大家さんが負担することになった場合の費用を紹介します。
※ここで紹介する金額はあくまでも一例です。部屋の状況や業者ごとで金額が変わりますので、必ず依頼前に見積もりを確認してください。
害虫駆除のみ 15,000円~
消臭のみ 30,000円~
清掃、駆除、消臭全般 60,000円~
また、臭いの強さや害虫の種類、体液や血液が床や壁に染み込んでいる場合は部屋の張替えが必要になるため、さらに金額がかかります。
1DK 55,000円~
2LDK 140,000円~
3LDK 190,000円~
部屋がゴミ屋敷化している場合は清掃費用や処理費用が増加します。また、遺品の数が極端に少ない場合などは、金額が安くなります。
このように大家さんが部屋の原状回復をする場合は、大きな金銭的負担がのしかかります。
アパートなどの大家さんが孤独死の発生によって被害をこうむる可能性があるのは、部屋の回復費用等の負担だけではありません。部屋で人が亡くなるということは事故物件になる可能性も秘めており、家賃の値下げを迫られるかもしれません。そのため、「下がった家賃の補填(損害賠償)は相続人にしてもらえるのか」と考えてしまう大家さんも少なくないはずです。
しかし、残念ながら孤独死の場合は損害賠償を請求できません。その大きな理由は、故意または過失があって亡くなっているわけではないためです。一方、自殺である場合は故意、過失があると認められるケースもあるので、損害賠償の請求ができます。
ただ、孤独死の場合は今後入居される方に告知義務はないものと考えられています。あまり騒ぎにならないように進められれば、家賃の値下げも必要もありません。つまり、損害賠償を請求する必要もなくなります。
プログレスは全国の
エリアで展開中!
現状対応できない地域も一部ございます。
詳しくはお問い合わせください。
今まで紹介してきた回復費用や損害賠償ができない側面を考えると、アパートなどに一人暮らしの高齢者を入居させるのは、リスクが大きく控えたいと思う大家さんもいらっしゃるかもしれません。
この章ではそんなリスクを軽減させる孤独死保険について紹介します。
孤独死保険とは孤独死によって起きた金銭的損害を補填するための保険です。これからの家賃軽減に対しての補填をしてくれる保険もあります。
加入方法は大家さんが加入するものと借主様が加入するものがあります。一人暮らしの高齢者がアパート等に入居する際には入居条件として、孤独死保険に加入してもらう大家さんもいるそうです。
そのような対策を行えば、孤独死が起きた時に大家さんの金銭的負担はほぼなくなります。
ただ、孤独死保険は保険ごとに補償範囲や金額、期間などが大きく異なるため、どのような内容のものがあり、どれが一番良いのか事前に見極める必要があります。大家さん側の保険では、「加入条件はアパート一棟全体のみ」といった難しい条件がある保険も存在するため、借主様が加入する保険でも大家さんが加入する保険でも事前に確認しておくことが重要です。
ここまで、孤独死が起きた場合の対応について紹介してきましたが、何といっても孤独死を起こさないに越したことはありません。
最後に孤独死の発生確率を軽減する方法を紹介します。
孤独死の発見理由の大半は「近隣に死臭が立ち込め、近隣住民から苦情が出て発見される」といったケースです。そのため、孤独死が起きた場合すぐに気が付けるようにするようにするためと、病気などで弱っていないかの確認のため、頻繁に大家さん自身がアパートなどの入居者の安否確認を取るようにしましょう。
民間企業が行っている見守りサービスを導入するのも良い方法です。
通報機の設置や見守り訪問(水道会社や配達業者など)で定期的に安否を確認してくれるので、大家さんがアパートなどの集合住宅から離れた地域に住んでいても安心です。
自治体ごとで内容は異なりますが、自治体の中には孤独死防止への施策を打ち出している地域もあります。お住いの自治体を調べ、活用できるものはないか試してみましょう。
孤独死はアパートなどを運営する大家さんにとっては被害が大きく、一刻も早く何とかしたいものではありますが、故人様の親族にとっては大切な方を失った大きな絶望の時です。そのため、早急に解決しなければならない問題以外は、「特別に待ってあげる」などの思いやりを持って接するようにしてください。また、このような悲劇的な事件をなくすためには、本人や親族の助けも必要ではありますが、大家さんの助けも必要です。孤独死を防ぐためにできることはないか考え、起きた時に素早く動けるようにしておきましょう。
この記事が少しでも役に立つことを望んでいます。お読みいただきありがとうございました。