特殊清掃という言葉はまだなじみが薄く、その内情を把握できている方は少ないものです。また、そんな特殊清掃を行う特殊清掃員については、全く作業内容や内情を知らない方も多いのではないでしょうか。
ただ、近年の少子高齢化による孤独死の増加で、特殊清掃の需要は増しています。つまり、特殊清掃を必要とする場面や特殊清掃員とやりとりする可能性が高まっているのです。
今回はそんな特殊清掃員について紹介していきます。
まず、特殊清掃員を説明する前に特殊清掃について紹介します。
特殊清掃とは何らかの理由で亡くなり、ご遺体が長期間放置された方(孤独死)の家や部屋の清掃、片付けをし、家や部屋を住める状態に戻すことです。つまり、部屋にある残置物の処理であったり、部屋の脱臭、除菌、汚れの除去などを行います。
ただ、ご遺体の搬出は行いません。ご遺体の搬出はすべて警察が行うため、特殊清掃はご遺体が搬出された後の部屋の原状回復のみに専念します。しかし、部屋には血痕や死臭などが残されており、悲しく、凄惨な現場であることは間違いありません。
では次に、主な作業を紹介します。
現場には体液や血液の付着した家具が残されていることが大半です。そのような品物を除去します。感染症予防と死臭を逃がさないようにするために、汚れた品物は袋に入れて密封したうえで除去します。また、ここで血液や体液が壁や床などにしみこんでいないか確認していきます。しみこんでいた場合は死臭が消えない可能性があるため、リフォームや解体が必要になる可能性があります。
ご遺体が放置されていた期間が、長期間であればあるほど死臭や腐敗臭はひどくなります。それらのにおいは近隣の方に漏れないようにしなければなりません。そんなにおいの発生源を見つけ出し、専門の機械でにおいの元を分解しながら脱臭していきます。
孤独死の現場では害虫が発生していることが大半です。ハエやウジの発生は近隣住民の生活の妨げになるだけでなく、感染症を拡大させる原因ともなるので、できるだけ早く駆除していきます。
現場は害虫やにおいなど、とても安心できる環境ではありません。そんな環境を安心して入れる場所にするために、消毒と除菌を行います。また、体液や血液には細菌が多く存在しているので、付着した場所は重点的に消毒、除菌を行い、感染症が広がらないようにします。
「汚染物の除去」で少し触れましたが、壁や床に体液や血液がしみ込み、住める状況ではないと判断した場合は、リフォームを行います。この作業は特殊清掃業者が他の会社に委託する場合もあります。
このように特殊清掃とは孤独死の現場を完全に回復するための全ての作業を行っているのです。
では、そんな作業を行う特殊清掃員になるにはどうすればよいのでしょうか。
その方法は意外に簡単です。
なぜかというと特殊清掃員になるうえで、特に資格などは必要ないからです。一般的な仕事と同じように、求人に応募し、適性があれば採用されます。
ただ、事件現場特殊センターが認定する「事件現場特殊清掃士」という資格や、一般社団法人・日本除菌脱臭サービス協会の「脱臭マイスター」、孤独死された方の遺品を片付けるという側面から、一般社団法人・遺品整理士認定協会の「遺品整理士」の資格があると採用されやすくなるかもしれません。
しかし、上記の資格は必ず必要という訳でなく、むしろ一番必要なのは凄惨な現場に向き合う気持ちでしょう。なぜなら、特殊清掃の現場では多くの無念が宿り、常に過酷な現場となるからです。
さらに、ご遺族様を思いやる気持ちも大切です。特殊清掃が必要になる現場では作業員が受けるショックより、ご遺族様が受けるショックのほうが大きいことは明白です。そのような現場で、悲しむご遺族様の気持ちを受け止められる心の余裕も、特殊清掃員には必要とされるのです。
つまり、精神的、肉体的にタフである必要があります。
そんな大変な仕事である特殊清掃は他の仕事に比べて、危険性の高い仕事でもあります。
この章ではそんな危険性について紹介します。
特殊清掃は、脱臭や消毒の際に身近に売られている市販の薬剤や消毒液で、対応することはまずありません。つまり、専門的な薬剤を使うのです。そのため、薬剤は他の物よりも強力であることが多く、消毒の際に使う安定化二酸化塩素など、使用者の健康に悪影響を及ぼすことがあります。正しく防護マスクなどを装着したうえで進めれば何の問題もありませんが、正しい用途で進めないと、呼吸器官に疾患が出ることもあります。
また、第一章で軽く触れましたが、特殊清掃の現場にはご遺体がなく、持病やどんな感染症を持っていたかが正確に分かりません。つまり、特殊清掃員は感染症に感染してしまう危険が非常に高いのです。そのため、体液や血液の付着した物には直接触れず、防護服やマスクを正しく装着する必要があります。また処分も丁寧に行わないと近隣に感染症を広めてしまう可能性もあるのです。
このように特殊清掃員は常に危険と隣り合わせの仕事なのです。
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特殊清掃の仕事は基本的には第一章で説明した通りではありますが、他の仕事が発生することもあります。
それは、遺品整理と不用品処分です。
亡くなった方が一人暮らしであった場合は、その家や部屋から退去または取り壊すなどの予定を大家さんや親族の方が決めています。その予定に合わせて、残された遺品を残す物・処分する物に整理する必要があります。また、遺品ににおいが染みついている場合は処分方法にも気を払う必要があります。さらに、貴重品の捜索や供養も併せて行える業者も存在しています。
退去などが決まっている場合は、不用品の処分も進めなくてはなりません。遺族の方の指示のもと、回収、処分します。また、リサイクルが必要な品物は適切な処分方法を紹介し、部屋に物が残されないよう、全ての作業や手続きを手伝います。
特殊清掃業者の中には上記の仕事を他の業者に委託するところもあります。ただ、特殊清掃を行う業者は自身で行えたり、知り合いの遺品整理業者や不用品回収業者と連携していることが大半であるため、もし行えない場合でも相談してみることが重要です。割安で紹介してくれるかもしれません。
最後に特殊清掃員の心構えについて紹介します。
高齢化社会で孤独死は増加し続けています。そのような昨今で、特殊清掃員の需要は悲しいことですが確実にあがっています。先ほども説明した通り、タフでなければやっていけないため、稼げそうなどと軽い気持ちでできるものではありません。社会に貢献する気持ちやご遺族様を少しでもサポートする、近隣の方々の生活を守るといった責任感を強く持つ必要があります。
ただ、大変だからこそやりがいのある仕事と言えます。
このような仕事を大変と感じながらも、充実感を持って進められる方が、本当の特殊清掃員になれるのではないでしょうか。
特殊清掃員を通して、特殊清掃の内情をお判りいただけたと思います。
特殊清掃がなければ、部屋や家は元通りにならず、害虫の住処となってしまい、近隣住民は快適に住むことはできなくなります。つまり、現場で亡くなった方の無念やご遺族様のケアだけではなく、近隣住民の安全な生活にも気を配る仕事なのです。
また、特殊清掃員になるためには、これといった資格は必要ありませんが、どんな現場にも耐えうる、タフさが必要です。
この記事を通して少しでも特殊清掃の知識が深まりましたら幸いです。お読みいただきありがとうございました。