近年、高齢者と単身世帯の増加により、孤独死が増え続けています。孤独死は「誰にも看取られずにひっそりと亡くなること」が条件とされており、賃貸住宅などで見つからないまま長期間放置されると、隣の部屋への臭い漏れや、近隣住民への大きな被害につながります。
そのため、賃貸住宅の大家さんやオーナーさんは孤独死の防止策や対応策を知っておく必要があるのです。今回はそんな賃貸住宅での孤独死の対策・防止策を紹介します。
まず始めに対策・防止策を紹介する前に、どうして孤独死対策や防止策が重要なのかを理解してもらえるよう、賃貸での孤独死の発生率について紹介します。
孤独死とは一般的に「高齢者の死」をイメージすると思います。
もちろん一番孤独死件数の多い世代は60代という結果が出ていますが、60代は全体の30%です。一方、現役世代の20代から50代は全体で合わせて40%という結果が出ております。
参考:(孤独死現状レポート)
つまり、孤独死の発生は高齢者のみの問題ではなく、事故死や病死などが孤独死の原因になることから全ての世代に起こりうる可能性があるということです。
また、若年層の方のほうが高齢者より近所付き合いが浅いことが多く、孤独死の発見が遅れ、高齢者の孤独死よりも悲惨な状況を引き起こしてしまうケースがあるのです。
このように孤独死はどのような世代でも発生するため、賃貸運営を行う大家さんやオーナーさんは「孤独死は起きるもの」と考えていなくてはなりません。
ではそんな孤独死が起きた際の対応例を紹介します。
孤独死の発覚は、近隣住民の通報や大家さん自身が発見することが大半です。死亡が確認できる場合は、警察と連帯保証人に連絡をします。
孤独死が明らかな場合でも警察に連絡するのは、死んだ瞬間を誰にも見られていないためです。つまり、事件性の有無を確認する必要があるのです。
また、警察への連絡後は連帯保証人に連絡を取り、葬儀などをすすめてもらえるようにします。
孤独死の放置されていた時間や季節によっても変動しますが、人が死ぬと死臭やハエなどの害虫が発生します。それらを除去するための清掃を、同じ賃貸に住む住民のために早急に行う必要があります。基本的には回復費用の負担者は連帯保証人→相続人→大家の順番ですが、連帯保証人は死亡届などさまざまな手続きに追われているので、連帯保証人と連携し大家さんやオーナーさんが手伝うのが、早急な原状回復につながります。
孤独死とは人の死が起きている状況であるため、遺品が発生します。その遺品整理も特殊清掃と同じような流れで進める必要があります。もし、相続人や連帯保証人がいない場合は大家さんやオーナーが進める必要があります。
葬儀などがある程度終わったら、連帯保証人や相続人などと賃貸契約についての精算を行います。もし、葬儀前などに連帯保証人と詳しく話せる状態であれば、清掃の日取りなどから退去日なども話し合えると良いでしょう。
孤独死が発覚した際は他の住民に知らせる告知義務はありませんが、死臭などで近隣住民の生活に支障をきたす場合があるので、早急な対応が必要です。また、死臭がひどい場合は臭いの処理が終わるまで、ホテルなどに一時避難させる必要が出る場合もあるそうです。
では、次に少し先ほどの章で触れましたが、これらの回復費用は誰が負担しなければならないのでしょうか。
特殊清掃と遺品整理で少々異なるため、分けて紹介します。
死臭などの除去費は、基本的に借主様(大半の場合が孤独死された方)の負担です。退去の際に回復費用を払うのと同じです。ただ、孤独死は借主様が亡くなっているため、負担できる本人がいません。
そのため、家賃滞納の際の代行などをする連帯保証人に負担が移ります。しかし、孤独死の起こる状況は身寄りがいないことも多く、連帯保証人も亡くなっているケースがあります。その場合は、相続人(親族)に移行します。もし、その相続人もいない場合はその賃貸の持ち主、つまり大家さんやオーナーさんに負担が移ります。
さらに、孤独死は自殺などでない限り、過失があったと認められないため、保証人が部屋すべての清掃費用を負担することはまれです。孤独死によって汚れたと断定できる場所のみの負担になるため、大家さんと折半になることも多いようです。
遺品整理は相続人が整理費用を負担します。大家さんやオーナーさんは相続人ではないため負担する必要はありませんが、相続人が相続放棄をした場合、相続人がいない場合は負担の必要が出てくることがあります。
このように、基本的には故人様の親族の方が負担してくれますが、孤独死は過失があると認められることがほぼないため、負担の折半など、大家さんやオーナーさんの負担がゼロであるケースはほぼありません。また、近隣住民への苦情対応も併せて行う必要があります。
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このように孤独死の発生は大家さんやオーナーさんに大きな負担がかかります。ただ、大家さんやオーナーさんにとってさらに不安なのは、「孤独死した物件が事故物件となり、今後に影響しないのか」ではないでしょうか。
そのため、この章では孤独死した物件は事故物件となるのかを紹介します。
先に結論を述べると、孤独死は過失のないものと見なされるため、事故物件と呼ばれることはありません。
ただ、孤独死の発見が遅れ、ひどい臭いが発生した、大きな清掃が必要になったなどの場合は、心理的瑕疵があったとみなされ、事故物件となることがあります。つまり、自殺や状況の悪い孤独死でない限りは、事故物件として新規住民や同じ賃貸に住む住民に知らせなくても良いのです。
しかし、現状は不動産会社などに金額の値下げなどを要求されてしまうこともあるようで、金額を維持したまま貸し出せる賃貸はまれなようです。また、孤独死した方に過失がないことから、連帯保証人などにも賠償請求ができず、孤独死は大家さんやオーナーさんにとっては大打撃となるのは避けられないでしょう。
賃貸を貸し出すものからしてみれば、このような大打撃は最悪としか言いようがないでしょう。さらに、賃貸の近隣住民に知られれば、ホテルへの一時退避の問い合わせや引っ越し費用などの請求などが来るかもしれません。これらのことに応えるとなると、大量の出費は免れません。
そのため、このような状況にならないためには、孤独死そのものをなくすしかありません。対策方法を紹介します。
定期的に訪問し、声掛けすることで、もし孤独死が起きていてもすぐに気が付くことができます。早期の発見は死臭の発生などを抑えられるため、近隣住民からの苦情や孤独死の噂の発生も抑えられます。
見守りカメラで安否を親族に確認してもらいましょう。すぐに気が付くことができます。
孤独死の危険性が高い高齢者の方には、水道検診や郵便などの民間の見守りサービスへの加入を進めてみましょう。もし、本人が理解できない場合は、連帯保証人などに加入を勧めるのもおすすめです。
火災保険の特約などに代表される孤独死保険は、孤独死発生時の金銭的負担を賄ってくれます。孤独死保険は大家さんやオーナーさんが入るものと借主(孤独死の危険性がある方)が入るものの2種類あり、補償内容もさまざまです。状況を見定めてどのようなものが良いか確認して入りましょう。
賃貸住宅での孤独死は大家さんやオーナーさんにとっては大打撃となる出来事であり、近隣住民も保証人などの親族にも不幸しかもたらしません。そして、孤独死した方の無念は言葉では表現できないほどのものでしょう。つまり、孤独死は起こした後の対策よりも、いかにして起こさないようにするかが何よりも大切です。
この記事で孤独死による不幸が少しでも減らせることを望んでおります。
お読みいただきありがとうございました。