少子高齢化、単身世帯の増加で社会問題となっている孤独死はアパートの賃貸運営を行う大家さんや管理会社にとって家賃収入に影響を及ぼす恐れのある重大な問題です。孤独死が発生してその発見が遅れたアパートは適切な原状回復を行わなければ再び賃貸運用することができなくなるなど、大きな損失となるからです。
万が一孤独死が起こってしまった場合、どのような状態になると特殊清掃が必要になるのでしょうか。その作業内容や費用相場なども併せて詳しくご紹介します。
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元汚部屋出身の整理収納アドバイザー。テーブルの上には書類がいっぱい、畳んでいない洗濯物の山から洋服を探す日々。そんな私でも整理収納アドバイザーの資格を取った事がきっかけで、片付けられられるようになりました。以前の私と同じように片付けが苦手な方の力になりたいと思い、片付けの仕事をしています。
孤独死があった現場すべてで特殊清掃が必要かというと、そういうわけではありません。具体的には以下の3点のうちどれか1つでも当てはまれば特殊清掃が必要といえます。
亡くなってからすぐに発見されれば、多くの場合遺体が大きく傷んでいることはありません。しかし発見が遅れ時間が経ってしまった孤独死の現場では遺体の腐敗が進み、体液や血液が漏れて床や壁に取れにくいシミを作り、周囲に腐敗臭が広がります。さらには細菌によって部屋が汚染されている可能性もあります。ここまでの状態になっているのであれば原状回復のための特殊清掃が必須です。細菌感染の恐れもあるので例え遺族であっても部屋に入ることはせず、必ず専門の特殊清掃業者に任せるようにしましょう。
孤独死の現場に限らず、ゴミ屋敷や汚部屋などでも害虫や害獣が大量発生してしまった状態では通常の清掃で対処できないので特殊清掃による駆除が必要になります。
孤独死の現場以外でも長年放置したゴミなどから悪臭が発生しているようなケースでは清掃を行っても悪臭が染み付いて取れないことがあります。そうした場合には特殊清掃での徹底消臭が不可欠です。
専門家に依頼し、きちんとした手順で特殊清掃を行う行為には、どのような理由があるのでしょうか。
孤独死が発生して事故物件となってしまったアパートでは、借主に対して心理的瑕疵の内容を告知する義務があります。それによって次の借主が見つかりにくくなるだけではなく、悪臭や害虫の発生などが影響しアパート内の他の住人も転居してしまうこともあり得ます。そのため、特殊清掃を行って腐敗臭を徹底して取り除き、リフォームを行う必要があるのです。
故人が住んでいた部屋が事故物件となった場合、遺族や連帯保証人に責任が発生し多額の損害賠償を請求される恐れがあります。しかし遺族や連帯保証人が事故物件の特殊清掃費用を負担し、部屋の原状回復ができればその部屋はまた賃貸運用できるようになるので賠償金額は大幅に軽減されます。
特殊清掃ではどのような作業を行うのかご説明します。
発見の遅れた孤独死の現場では細菌が繁殖していることもあり、無防備な状態で部屋に入ると感染症に罹患する恐れがあります。そのため、除菌用の薬剤を散布して殺菌・除菌を行います。
遺体の腐敗が進んでいる場合、体液や血液が床や家具などに染み付いているため、一般的な清掃では落としきれません。それらを専用の洗浄機器や薬剤を使用して除去します。
腐敗臭の除去はとても困難です。オゾン脱臭機などの専用機器や薬剤を使用して消臭を行いますが、状態によっては悪臭の元が染み込んでしまった床や壁を一部解体して作業することもあるなど、完全に臭いが消えるまで数日間の作業が必要になる場合もあります。
遺体の体液や血液が染み込んで汚染された家具・家財やその他の不用品を処分します。
害虫や害獣が大量発生している場合は殺虫剤などを使用して駆除します。
汚れがひどく、洗浄でも取り切れないような場合には床や壁の張り替えなどのリフォーム作業を行います。
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特殊清掃の費用は間取り(広さ)と作業内容によって変わってきます。この章では「間取り別の費用相場」と「作業内容別の費用相場」をご紹介します。
間取り | 費用相場 |
1R・1K | 50,000円~ |
1DK | 100,000円~ |
1LDK | 140,000円~ |
2LDK | 160,000円~ |
3LDK | 250,000円~ |
作業内容 | 費用相場 |
オゾン脱臭(1日) | 30,000円~ |
除菌剤・消臭剤の散布 | 10,000円~ |
浴室の特殊清掃 | 40,000円~ |
床の特殊清掃 | 30,000円~ |
害虫駆除 | 10,000円~ |
上記料金はあくまでも相場です。汚染されていて処分する家財・家具が多かったり、悪臭の染み付きがひどいなど清掃が困難な状況であればかかる費用は増加します。そのため依頼する前に詳細な見積もりを作成してもらうことを推奨します。
ここまでの説明で特殊清掃作業が大変困難かつ専門性の高い作業だとご理解いただけたかと思います。では、特殊清掃作業はどこの業者に依頼すればいいのでしょうか。
特殊清掃を行う現場では汚染度や汚染要因に合わせて薬剤を選んだり除去方法を決めなければいけません。これらの判断を行うには経験が必要で、技術不足の業者に依頼してしまうと施工後にも関わらず悪臭が再発したり、シミが浮き出てくるなどのトラブルが発生することもあります。ホームページなどで実績や創業年数を確認しましょう。
特殊清掃を行う際、状況によっては解体工事を伴う作業が必要になります。そのため仕事を請け負うには建設リサイクル法に基づいた、建築業許認可の「解体工事業登録」が必須です。
その他にも必要な資格などがありますので以下にご紹介します。
一般廃棄物収集運搬業許可
特殊清掃の現場から出る廃棄物の運搬・処分を行うためにはこの許可が必要です。
事件現場特殊清掃士
一般社団法人事件現場特殊清掃センターが認定する民間資格です。必須の資格ではありませんが、特殊清掃についての基礎知識や作業に際しての心得などを一定レベル以上体得している証明になります。
脱臭マイスター
一般社団法人日本除菌脱臭サービス協会が認定する民間資格です。こちらも必須の資格ではありませんが、臭いを除去することに関する知識が得られるので特殊清掃の現場で役立つ資格といえるでしょう。
「初期見積もりが安くても施工後に莫大な追加料金を請求される」「安価で施工してもらえたけれど、後日悪臭が再発した」などトラブルに発展するような悪質業者も残念ながら存在します。少なくとも3社以上に相見積もりを依頼し、こちらの要望を細かく伝え、比較して選ぶようにしましょう。
電話やメールでの対応、実際に会ったときの印象が「親切で丁寧か」「必要な作業に着手できる技術があるか」を注意して見てみましょう。説明がわかりやすい、費用についても詳しく説明してくれるなど信頼できるところを選びましょう。
実際にサービスを利用した人の口コミも参考になります。自身の状況と比較することで、どの業者が要望や予算に合うのかを吟味できます。
特殊清掃は通常の清掃と比べるとかなり高額です。しかし発見が遅れてしまった孤独死の現場はしっかりと原状回復しなければ再び貸し出すことは困難になり大きな損失となります。高額の費用がかかったとしても、専門家に適切に対処してもらうことで長期的に見た場合には損失を抑えられるため、慎重な考慮をおすすめします。
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