一軒家を特殊清掃する場合、後々売却するか、他の人が住むことを想定して作業を行う必要があります。実際の現場ではどのような作業工程で行われているのか、また特殊清掃ならではの作業とはどのようなものかを詳しくご紹介いたします。
この記事を監修した人
元汚部屋出身の整理収納アドバイザー。テーブルの上には書類がいっぱい、畳んでいない洗濯物の山から洋服を探す日々。そんな私でも整理収納アドバイザーの資格を取った事がきっかけで、片付けられられるようになりました。以前の私と同じように片付けが苦手な方の力になりたいと思い、片付けの仕事をしています。
特殊清掃が必要な現場状況はその時々によって千差万別で、同じ状態はありません。孤独死の場合も、発見までの経過時間や季節、場所、物件によっても状態は異なるので、特殊清掃の工程も、その都度、臨機応変な対応が求められます。こちらでご紹介する特殊清掃作業の流れはあくまでもその一例となりますが、それぞれの工程を詳しくみていきましょう。
事前のヒアリングはとても大切です。特殊清掃では建物の一部を解体しなければいけない場合もあり、どこまでの作業を行うのか詳細について打ち合わせをします。「遺品整理もしてほしい」「探し物をしてほしい」などの要望もこの時に伝えます。
発見の遅れた孤独死の現場などでは菌が繁殖し、健康被害の危険性もあるため、そのままでは屋内に入ることはできません。防護服やマスクを着用し、専用の薬剤と機器を使用して最初に除菌・消毒を行います。
時間が経過しているご遺体からは体液や血液などが漏れ出し、家財や家具に染み付いている場合があります。これらの汚損物を厳重に梱包し、臭いなどが漏れないようにして運び出します。
部屋の広さにもよりますが1~2時間ほどオゾン消臭器をかけ、大まかな消臭を行います。これはこの後の遺品整理に伴う家具・家財の搬出の際に、扉を開け放しても悪臭が広がらないようにするためであり、近隣への配慮でもあります。
遺品整理や遺失物探索を行います。一軒家の場合、権利書・登記簿謄本・通帳・遺言書などを探すことが多いようです。また業者によっては不用品の買取なども行ってくれます。
汚損がひどい場合は建物の一部を解体して清掃・消臭する必要があります。ご遺体の体液が床下まで染み込んでしまっているようなときには床をどれだけ掃除し、消臭してもしばらくすると悪臭が戻ってきてしまいます。
害虫が発生しているような場合には解体・清掃の前に専用の薬剤を使用して害虫駆除を行います。
家または部屋全体のクリーニング作業をします。
オゾン消臭器などを用いて徹底消臭を行います。完全に臭いを除去するには数日かかる場合もあります。
通常の清掃とは異なる特殊清掃の特徴ともいえる工程は次の3つです。
人が住める状態まで原状回復するためには除菌・消毒が必要不可欠です。これを疎かにすると健康被害に繋がります。様々な薬剤を使用し、状況に合わせて散布します。
害虫は少しでも見逃すとすぐに増えてしまうので、徹底して駆除する必要があります。
完全消臭するには手間も時間もかかりますが、徹底して行わなければ後々悪臭が再発します。多くの場合、オゾン消臭器などの専門機器や薬剤を使用し消臭を行います。
一般の清掃業者は「一般廃棄物収集運搬業許可」や、不用品買取を行っているところでは「古物商許可」などの資格を持っています。しかし、2章でもお伝えしましたが、特殊清掃では徹底した「汚損と悪臭の除去」が重要です。そのためには「解体工事」ができなければいけません。特殊清掃業者は「解体工事」を作業のひとつとして行えるよう、一般的な清掃業者では持つことのない特別な資格も必要になります。
特殊清掃業者は各都道府県の知事、もしくは大臣から許可認定された「解体届」や「解体許可」を持った解体業者としての登録が必須です。
プログレスは全国の
エリアで展開中!
現状対応できない地域も一部ございます。
詳しくはお問い合わせください。
3章でご紹介した「解体届」や「解体許可」の登録が義務化されたのは、実はここ数年のことです。これは悪質な業者や技術力の劣る業者によって、顧客とのトラブルが絶えなかったからです。そこでこの章では優良な特殊清掃業者の選び方についてお伝えします。
「解体届」もしくは「解体許可」の登録がされているのは必要最低限の条件となります。その他「事故現場特殊清掃士」「脱臭マイスター」「遺品整理士」などの民間資格は特殊清掃業務に必須ではありませんが、より専門的に役立つ知識を深めようとする企業側の姿勢を測ることはできるでしょう。
現場ごとに臨機応変な対応が求められるのが特殊清掃作業です。汚れの種類や原因によっても使用する薬剤を変えたり、悪臭の除去方法を決めたりなど、やはり経験値が高いほど適切な対応が取れるといえるでしょう。間違った作業対応をしてしまうと、後日「悪臭が戻ってきた」「シミが浮き出てきた」などのトラブルになりかねません。
初期見積もりが安くても「作業当日に追加が相次ぎ、結果として莫大な料金を請求されてしまった」「作業が不十分で悪臭がまた発生し、他の業者へ再依頼して結局高くついた」というトラブル事例もあります。最初から依頼者の要望にそった細かな見積もりを作成し、作業内容などの質問にも丁寧に答えてくれるかは、信頼度を測る良い判断材料になります。また、数社に相見積もりを依頼し、比較することも大切です。
実際に特殊清掃サービスを利用した人のコメントや口コミは参考になるでしょう。「どんなプランを利用したか」「スタッフの対応はどうだったか」など、詳しく見てみましょう。それらから業者の対応力や技術力、かかった費用などが分かります。
「良いことしか話さない」「相手や状況で対応が変わる」ような場合は少し気を付けたほうが良いかもしれません。できること、できないことを正直に説明してくれて、話に一貫性があるところ、料金プランについても明確に説明してくれるところを選びましょう。
ニッセイ基礎研究所によって発表された「セルフ・ネグレクトと孤独死に関する実態把握と地域支援のあり方に関する調査研究報告書」(平成22年度老人保健健康増進等事業)内の「東京23区内における一人暮らしの者の死亡者数の推移」によると、一人暮らしで65歳以上の人の死亡者数(死亡から4日以上経って発見された人)が平成15年時点で1,451人なのに対し、平成27年には3,127人にも達しており、2倍以上にも増えています。
この結果を基に死亡者の発生数が同水準と仮定して全国都道府県での数を試算してみると、年間8,604~26,821人もの人が孤独死と想定される状態で亡くなっている可能性があるそうです。
少子高齢化、核家族化、単身世帯化が進み、地域コミュニティも薄れている中で、2019年12月から拡大した新型コロナウイルス感染症の影響で、孤独死はさらなる増加の一途を辿っています。
こうした背景もあり、特殊清掃の依頼も年々増えています。もはや孤独死問題は他人事ではなくなってきているということでしょう。
一軒家での孤独死は、売却の際には事故物件としての告知義務が発生します。どんなに特殊清掃できれいに原状回復できたとしても告知義務はなくなりません。場合によっては買い手がつかない、あるいは土地代ほどでしか売却できないこともあります。そうした場合には「解体して更地にする」「家を建て直す」という選択肢も考えてみるのが良いでしょう。
現代は孤独死問題が身近に起きてもおかしくない状況といえます。当コラムでは「特殊清掃作業の流れ」や「特殊清掃の特徴」「必要な資格」などについて紹介しました。特に一軒家の場合は、そのまま住居として使用するか売却するにしてもしっかりとした原状回復が必要です。トラブルに合わないよう、技術力と対応力に優れた業者を見極めて依頼するように注意してください。